15族のリン P、14族の炭素 C とケイ素 Si は、同素体・化合物の多様性が特徴です。
リンの同素体(黄リン vs 赤リン)の性質の違い、CO と CO2 の製法、
SiO2 からケイ酸ナトリウム・水ガラス・シリカゲルへとつながる変換の流れを整理しましょう。
リン P には主に2つの同素体があります。どちらも燃焼すると十酸化四リン P4O10 を生じます。
| 黄リン(白リン)P4 | 赤リン | |
|---|---|---|
| 構造 | 正四面体形の P4 分子 | 不規則な高分子構造 |
| 外観 | 淡黄色のろう状固体 | 赤褐色の粉末 |
| 毒性 | 非常に有毒 | ほぼ無毒 |
| 自然発火 | 空気中で自然発火する(約35℃) | 自然発火しない |
| 保存方法 | 水中に保存 | 通常の保存でよい |
| 変換 | 空気を断って約250℃に加熱→赤リンに変化 | 加熱で黄リンに変化 |
| 用途 | (軍事用煙幕など) | マッチの箱の側薬、農薬の原料 |
黄リン P4 は空気中で約35℃という低温でも自然発火するため、必ず水中に保存します。「なぜ水中か」と聞かれたら「空気(酸素)との接触を防ぐため」と答えましょう。なお、黄リンは水には溶けませんが、水と反応もしないため水中保存が有効です。
リンを空気中で燃焼させると十酸化四リン P4O10(五酸化二リン P2O5 とも表す)が得られます。白色の粉末で、強い吸湿性をもち、乾燥剤として使用されます。また、水と反応してリン酸 H3PO4 を生じます(酸性酸化物)。
P4 + 5O2 → P4O10
P4O10 + 6H2O → 4H3PO4
リン酸は3価の中程度の酸(弱酸より強く、強酸ほどではない)で、肥料・食品添加物・金属の錆止めに利用されます。カルシウムとの塩(リン酸カルシウム)は骨や歯の成分です。
P4O10 は最も強力な乾燥剤の一つです。中性の気体(H2、O2、N2、CO 等)や酸性の気体(CO2、SO2、HCl 等)の乾燥に使えます。ただし NH3(塩基性)は不可(反応する)。
炭素 C の同素体にはダイヤモンド・黒鉛(グラファイト)・フラーレン(C60 等)・カーボンナノチューブなどがあります(詳細は 3-7「結晶の種類」参照)。いずれも C 元素のみからなりますが、構造が異なるため性質が全く違います。
CO は無色・無臭の気体で、非常に有毒(ヘモグロビンと強く結合して酸素運搬を阻害)です。水に溶けにくく、強い還元性をもちます(製鉄の還元剤として重要)。
実験室的製法:ギ酸 HCOOH に濃硫酸(脱水剤)を加えて加熱します。
HCOOH (濃 H2SO4、加熱) → H2O + CO↑
工業的製法:赤熱したコークス(C)に高温の水蒸気を吹き込む(水性ガス反応)か、CO2 をコークスで還元します。
C + H2O (高温) → CO + H2 (水性ガス)
CO2 + C (高温) → 2CO
CO2 は無色・無臭の気体で、水に少し溶けて弱酸性(炭酸 H2CO3)を示します。ドライアイス(固体 CO2)は −78.5℃で昇華します。
実験室的製法:石灰石(炭酸カルシウム CaCO3)に希塩酸を加える(「弱酸の塩+強酸 → 弱酸遊離」)。
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2↑
工業的製法:石灰石の熱分解(石灰の製造の副産物)。
CaCO3 (加熱) → CaO + CO2↑
捕集は下方置換(CO2 の分子量 44 > 空気の平均分子量 29)。乾燥剤は濃硫酸またはP4O10(ソーダ石灰は CO2 を吸収するため不可)。
| CO(一酸化炭素) | CO2(二酸化炭素) | |
|---|---|---|
| 色・臭い | 無色・無臭 | 無色・無臭 |
| 毒性 | 非常に有毒 | 無毒(高濃度は窒息の危険) |
| 水への溶解 | 溶けにくい | 少し溶ける(弱酸性) |
| 捕集法 | 水上置換 | 下方置換 |
| C の酸化数 | +2 | +4 |
| 還元性 | 強い還元剤 | なし(安定) |
| 主な用途 | 製鉄の還元剤、燃料 | 炭酸飲料、ドライアイス、消火剤 |
ケイ素 Si はダイヤモンド型の共有結合の結晶で、金属光沢をもちます。地殻中では酸素 O に次いで2番目に多い元素です。
最大の特徴は半導体であること。コンピュータの集積回路(IC)や太陽電池に広く用いられています。高純度のケイ素は半導体産業の根幹をなします。
SiO2 は共有結合の結晶(1つの Si に4つの O が結合した三次元構造)で、無色透明・非常に硬く・融点が高い(約1700℃)。
SiO2 + 2NaOH → Na2SiO3 + H2O
SiO2 + Na2CO3 → Na2SiO3 + CO2↑ (高温・融解)
SiO2 は酸性酸化物なので通常の酸(HCl、H2SO4 等)には溶けません。ところがフッ化水素酸 HF にのみ溶けます。これは SiO2 と HF の特殊な反応(ヘキサフルオロケイ酸 H2SiF6 の生成)によるもので、ガラスを HF で彫刻する「エッチング」に利用されています。HF をガラス製の容器に保存できないのはこのためです。
ケイ酸ナトリウム Na2SiO3 に水を加えて加熱すると、水ガラス(water glass)とよばれる粘性の大きい液体が得られます。接着剤・塗料・耐火材料に利用されます。
水ガラスに塩酸などの酸を加えると、白色ゲル状のケイ酸 H2SiO3 が沈殿します。
Na2SiO3 + 2HCl → H2SiO3↓ + 2NaCl
ケイ酸 H2SiO3 を加熱・乾燥させるとシリカゲルが得られます。多孔質で表面積が大きく、様々な分子を吸着できます。吸着剤・乾燥剤として食品・薬品の包装に広く使われます。
天然の石英(SiO2)を約2000℃で融解・急冷すると石英ガラスが得られます。耐熱性・耐薬品性に優れ、光ファイバー・実験器具に利用されます。
SiO2 に Na2CO3(炭酸ナトリウム)と CaCO3(石灰石)を混ぜて溶融したソーダ石灰ガラス(窓ガラス・ビン)は日常的なガラスです。
ケイ素 Si と炭素 C は同じ14族で価電子数4、どちらも共有結合の結晶(ダイヤモンド型構造)をつくります。しかし Si は炭素と異なり有機化合物のような多様な分子をつくりにくく、代わりに SiO2(二酸化ケイ素)という三次元網目構造が非常に安定です。C は有機化合物の骨格として生命を支え、Si は半導体・ガラスとして現代文明を支えているとも言えます。
15族(P)・14族(C、Si)の非金属元素は、同素体の多様性と化合物の用途が入試頻出です。
Q1. 黄リンの保存方法とその理由を答えよ。
Q2. 実験室で CO2 を発生させる方法を、化学反応式と捕集法を含めて説明せよ。
Q3. SiO2 と NaOH の反応を化学反応式で示し、生成物の名称を答えよ。
Q4. 水ガラスからシリカゲルを得る手順を、関係する化学反応式とともに説明せよ。
基礎(A)から発展(C)まで段階的に取り組んでみてください。
炭素・ケイ素・リンとその化合物に関する記述として正しいものを、次の①〜⑤からすべて選べ。
②③④
①が誤り。黄リン P4 は赤リンより不安定で、自然発火性をもち非常に有毒です。安定で無毒に近いのは赤リンです。
②正しい。SiO2 は酸性酸化物なので通常の酸には溶けませんが、HF との特殊な反応(SiO2 + 6HF → H2SiF6 + 2H2O)で溶けます。
③正しい。CO(C の酸化数 +2)は +4 まで酸化されやすく、強い還元剤です。Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2(製鉄の反応)。
④正しい。これが水ガラスの製法です。
⑤が誤り。P4O10 は酸性の乾燥剤です。NH3(塩基性)は P4O10 と反応するため使用できません。
ケイ素とその化合物について、以下の問いに答えよ。
(1) 二酸化ケイ素 SiO2 と炭酸ナトリウム Na2CO3 を高温で反応させたときの化学反応式を書け。
(2) (1) の反応が「弱酸の塩 + 不揮発性(高温での)強酸 → 強酸の塩 + 弱酸(揮発)」という観点から説明できる理由を述べよ。
(3) SiO2 が HF にのみ溶け、他の酸(HCl、H2SO4 等)に溶けない理由を述べよ。
(1) SiO2 + Na2CO3 → Na2SiO3 + CO2↑ (高温)
(2) ケイ酸(H2SiO3)は炭酸(H2CO3)より弱い酸である。高温では SiO2(ケイ酸の酸性酸化物)が Na2CO3(炭酸の塩)から CO2(揮発性の弱酸)を追い出し、より安定な Na2SiO3(ケイ酸の塩)が生じる。
(3) SiO2 は酸性酸化物であるため、HCl・H2SO4 などの酸とは反応しない(酸性酸化物は酸とは基本的に反応しない)。一方、HF は SiO2 と特殊な反応(SiO2 + 6HF → H2SiF6 + 2H2O)を起こし、ヘキサフルオロケイ酸 H2SiF6 という可溶性の化合物が生成するため溶ける。
(2) の「高温での反応」が重要です。常温では SiO2 は固体で反応しにくいですが、高温融解条件では反応が進みます。「弱酸・強酸」の序列はケイ酸 < 炭酸 < 塩酸 < 硫酸 であることを押さえましょう。
ギ酸 HCOOH(式量46)10.0 g に濃硫酸(脱水剤)を加えて加熱し、生成した CO を標準状態で捕集した。また、この CO を酸素中で完全燃焼させた。原子量 H=1.0、C=12、O=16 として以下の問いに答えよ。
(1) 反応の化学反応式を2つ書け(HCOOH の分解反応と CO の燃焼反応)。
(2) 捕集された CO は標準状態で何 L か。
(3) (2) の CO を完全燃焼させると、生成する CO2 の質量は何 g か。
(1) HCOOH → H2O + CO↑ (濃 H2SO4、加熱)
2CO + O2 → 2CO2 (燃焼)
(2) HCOOH の物質量 = 10.0 ÷ 46 = 0.217 mol。HCOOH:CO = 1:1 より CO = 0.217 mol。
標準状態の体積 = 0.217 × 22.4 ≈ 4.87 L
(3) CO:CO2 = 1:1 より CO2 = 0.217 mol。CO2 の式量 = 44。
質量 = 0.217 × 44 ≈ 9.55 g
HCOOH の脱水分解は「H と OH が H2O として抜けて CO が残る」と覚えましょう。HCOOH(式量46)のうち H2O(18)が抜けて CO(28)が残ります(18 + 28 = 46)。
炭素の物質量保存:HCOOH → CO → CO2 の各段階で C 原子の数が変わらないことを確認します。