すべての物質は原子からできています。では、原子はどのような構造をもっているのでしょうか。
この記事では、原子を構成する3種類の粒子(陽子・中性子・電子)の役割と、
原子番号・質量数という2つの数の意味を理解します。
イギリスの化学者ドルトンは1803年、「すべての物質は、それ以上分割できない最小の粒子からできている」という考えを提唱しました。彼はこの最小粒子を原子(atom)とよび、この考えをドルトンの原子説といいます。
ドルトンは、異なる元素の原子は種類が異なり、化合物はそれらが一定の比で結びついてできると考えました。この考えは質量保存の法則や定比例の法則を統一的に説明できるものでした。
19世紀後半から20世紀にかけて、原子がさらに小さな粒子から成ることが示されました。イギリスのJ.J. トムソンは1897年、ほぼ真空状態の容器内に2つの電極を設けて放電実験を行い、陰極から直線的に進む陰極線が放出されることを確認しました。陰極線は電極板によって電源の正極側に曲がることから、負の電荷をもつ粒子(電子)の流れであることがわかりました。この発見により、原子は分割可能であることが明らかになりました。
イギリスのラザフォードらは1911年、薄い金箔にα線(正の電荷をもつ粒子の流れ)を当てる実験を行いました。ほとんどのα線は直進しましたが、一部のα線は大きく跳ね返されました。
この結果は、「原子の占める空間の大部分はほぼ空であり、原子の質量の大部分はごく小さな正の電荷をもつ核(原子核)に集中している」ことを示していました。こうしてラザフォードは原子核の存在を確認し、原子核の周りを電子が取り巻く有核原子模型を提唱しました。
現在では、原子は原子核と電子から構成されていることが明らかになっています。原子核はさらに陽子と中性子から構成されています。
| 粒子 | 記号 | 電荷 | 質量 | 質量比(陽子を1とする) |
|---|---|---|---|---|
| 陽子 | p | +1 | 1.673 × 10−24 g | 1(基準) |
| 中性子 | n | 0(なし) | 1.675 × 10−24 g | 約 1(陽子とほぼ等しい) |
| 電子 | e− | −1 | 9.109 × 10−28 g | 約 1/1840(非常に小さい) |
陽子1個の電荷の絶対値と電子1個の電荷の絶対値は等しく、1.602 × 10−19 C(クーロン)です。これは電気量の最小単位で、素電荷(電気素量)とよばれます。
原子の直径はおよそ 10−10 m(= 0.1 nm) のオーダーです。一方、原子核の直径はおよそ 10−15 m のオーダーであり、原子全体の直径の約10万分の1にすぎません。原子の内部のほとんどはほぼ空間であり、そのわずかな空間を電子が取り囲む構造になっています。
原子核の直径は原子全体の約10万分の1です。直径0.1 mmの砂粒を東京ドーム(直径約200 m)の中心に置いたときの比率に相当し、原子核がいかに小さいかがわかります。
また、電子1個の質量は陽子の約1/1840しかないため、原子の質量はほぼ原子核(陽子と中性子)の質量の和と見なせます。
原子核に含まれる陽子の数を原子番号といいます。原子番号は元素ごとに固有の値であり、元素の種類を決定します。
原子核に含まれる陽子の数と中性子の数の和を質量数といいます。電子の質量は陽子・中性子に比べてきわめて小さいため、原子の質量は質量数にほぼ比例します。
質量数 = 陽子の数 + 中性子の数
中性子の数 = 質量数 − 原子番号
原子の種類を原子番号と質量数を含めて表すときは、元素記号の左上に質量数、左下に原子番号を書きます。
AZX (X:元素記号、A:質量数、Z:原子番号)
| 表記 | 元素 | 原子番号(陽子数) | 質量数 | 中性子数 | 電子数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 11H | 水素 | 1 | 1 | 0 | 1 |
| 126C | 炭素 | 6 | 12 | 6 | 6 |
| 168O | 酸素 | 8 | 16 | 8 | 8 |
| 2311Na | ナトリウム | 11 | 23 | 12 | 11 |
| 2713Al | アルミニウム | 13 | 27 | 14 | 13 |
なお、原子番号が元素によって決まっているため、12C や 23Na のように原子番号を省略して書く場合もあります。
通常の原子は、陽子の数(正の電荷)と電子の数(負の電荷)が等しいため、全体として電気的に中性です。
陽子の数 = 電子の数 = 原子番号
例えば、炭素原子 126C は陽子6個・電子6個をもち、+6と−6の電荷が打ち消し合うため中性です。ナトリウム原子 2311Na は陽子11個・電子11個で中性です。
原子が電子を受け取ったり放出したりすると、陽子数と電子数がずれて「イオン」になります(次節)。
原子番号(= 陽子の数)がわかれば、その原子の「元素の種類」と「電子の数」が同時に決まります。中性子の数だけは同じ元素でも異なることがあります(同位体)。この「陽子数 = 原子番号 = 電子数(中性原子)」という関係を軸にすれば、構成粒子の数の問題はすべて解けます。
原子の構造は、化学全体の出発点です。以下に、ここでの知識が他の章とどうつながるかを整理します。
次の記事では、同じ元素でも中性子の数が異なる同位体と、不安定な核が放射線を出して別の元素に変わる放射性同位体を扱います。
Q1. 次の原子について、陽子の数・中性子の数・電子の数をそれぞれ答えてください。① 168O ② 2311Na ③ 2713Al
Q2. 原子が電気的に中性である理由を、「陽子」「電子」という語を使って説明してください。
Q3. 質量数35、原子番号17の原子について、陽子・中性子・電子の数をそれぞれ答えてください。また、この原子の元素名を答えてください。
Q4. 原子の直径と原子核の直径のオーダーをそれぞれ答えてください。
基礎(A)から発展(C)まで段階的に取り組んでみてください。
原子の構造に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選べ。
③
① 誤り。原子の質量のほとんどは原子核(陽子と中性子)が占める。電子の質量は陽子の約1/1840しかない。② 誤り。陽子の数は「原子番号」。「質量数」は陽子の数+中性子の数。③ 正しい。中性の原子では陽子の数(正電荷)=電子の数(負電荷)で電気的に中性になる。④ 誤り。中性子は電荷をもたない。⑤ 誤り。原子核の直径(約10−15 m)は原子全体の直径(約10−10 m)の約10万分の1。
ある原子 X は、陽子13個、中性子14個、電子13個から構成されている。
(1) この原子の原子番号と質量数をそれぞれ求めよ。
(2) この原子の元素記号を、原子番号と質量数を付記した形式で書け。
(3) この原子が電気的に中性であることを、陽子・電子の数をもとに説明せよ。
(1) 原子番号 13、質量数 27
(2) 2713Al
(3) 陽子13個(電荷 +13)と電子13個(電荷 −13)が等しいため、合計の電荷が0となり電気的に中性である。
(1) 原子番号 = 陽子の数 = 13。質量数 = 陽子の数 + 中性子の数 = 13 + 14 = 27。(2) アルミニウム Al の左上に質量数27、左下に原子番号13を書く。(3) 陽子1個の電荷は +1、電子1個の電荷は −1。陽子13個と電子13個の電荷の合計は (+13)+(−13)=0 となるため、原子全体は電気的に中性。
銅 Cu は銅(II)イオン Cu2+ になることが知られており、Cu2+ の電子の数は27個である。
(1) 銅原子 Cu の原子番号はいくつか。考え方とともに答えよ。
(2) 銅の最も一般的な同位体は 63Cu である。この原子の中性子の数を求めよ。
(3) 銅原子が Cu2+ になるとき、何個の電子を失ったか答えよ。また、Cu2+ が電気的に中性でない(+2の電荷をもつ)理由を説明せよ。
(1) 原子番号 29
(2) 中性子数 = 63 − 29 = 34 個
(3) 2個の電子を失った。Cu2+ では陽子29個(電荷 +29)に対して電子27個(電荷 −27)のため、合計電荷が +2 となり正電荷をもつ。
(1) Cu2+ は中性の Cu 原子が電子を放出してできたイオンである。Cu2+ の電子数が27個であり、イオン化によって電子の数が変わる(陽子の数は変わらない)ことに注意する。Cu2+ の電荷が +2 であるから、陽子の数は 27 + 2 = 29。よって原子番号は29。(2) 63Cu の質量数63から原子番号29を引いて、中性子数 = 63 − 29 = 34 個。(3) 中性の Cu 原子は電子29個、Cu2+ は電子27個。29 − 27 = 2個の電子を失った。Cu2+ では陽子29個(+29)、電子27個(−27)なので合計電荷は +29 + (−27) = +2。陽子数 > 電子数となるため正電荷をもち、電気的に中性でなくなる。