第2章 原子の構造と周期表

周期表と元素の周期性

現在の周期表には118種類の元素が整然と並んでいます。この配列には深い意味があります。
縦の列(族)が同じ元素は価電子数が等しく、化学的性質が似ています。
横の行(周期)に沿って原子番号が増えると、原子半径・イオン化エネルギー・電気陰性度が規則的に変化します。
この記事では、周期表の構造と「元素の周期性」を電子配置から統一的に理解します。

1周期表の成り立ち

メンデレーエフの周期律

1869年、ロシアの化学者メンデレーエフ(Mendelejev, 1834–1907)は、当時知られていた約60種類の元素を原子の質量の小さいものから順に並べると、性質のよく似た元素が一定の間隔で繰り返し現れることに気づきました。このように、元素の性質が周期的に変化することを元素の周期律といいます。

メンデレーエフは「まだ発見されていない元素が存在するはずだ」と考え、その性質を予測して空欄を残した周期表を作りました。その後、ゲルマニウム(Ge)など予測された元素が次々と発見され、彼の周期律の正しさが証明されました。

現在の周期表

20世紀に入り、原子の構造(原子核と電子)が解明されると、元素を原子番号(陽子の数)の順に並べることで、周期律がより明確に説明できるようになりました。現在の周期表は原子番号順で配列されており、同じ族の元素は価電子数が等しく、化学的性質が類似しています。

元素の性質が周期的に変化するのは、原子番号が増すにつれて価電子の数が周期的に変化するからです。価電子数が同じ元素は互いに似た化学的性質をもちます。

2周期表の構造

周期と族

周期表の横の行周期といいます。第1周期から第7周期まであり、同じ周期に属する元素の原子は最外殻の電子殻が同じです。たとえば第2周期(Li〜Ne)の最外殻はすべてL殻、第3周期(Na〜Ar)の最外殻はすべてM殻です。

周期表の縦の列といいます。1族から18族まであり、同じ族に属する元素(同族元素)は価電子数が等しく、化学的性質が互いに似ています。

典型元素と遷移元素

周期表の1・2族と13〜18族の元素を典型元素といいます。典型元素では、原子番号が1増えるごとに価電子数も1増えるため、族番号の一の位の数値が価電子数(18族を除く)と一致します。

一方、3〜12族の元素を遷移元素といいます。遷移元素では、原子番号が増加しても最外殻電子の数は1個または2個のままほとんど変化しません。これは、原子番号の増加に伴って内側の電子殻に電子が収容されるためです。そのため、遷移元素は典型元素ほど族ごとの性質の変化が大きくありません。

分類該当する族価電子数の変化
典型元素1・2族、13〜18族族番号の一の位と一致(18族は0)Na, Mg, Al, Si, Cl, Ar
遷移元素3〜12族1〜2個でほぼ一定Fe, Cu, Zn, Cr, Mn

なお、遷移元素はすべて金属元素です。典型元素には金属元素と非金属元素の両方が含まれます。

金属元素と非金属元素の境界

周期表の水素を除く左側・下側の元素は、単体が金属の性質(金属光沢・電気伝導性・延性・展性)を示す金属元素です。一方、右上側の元素は単体が金属の性質を示さない非金属元素です。

金属元素は価電子の数が少なく、電子を放出して陽イオンになりやすい性質(陽性)をもちます。非金属元素は価電子の数が多く、電子を受け取って陰イオンになりやすい性質(陰性)をもちます。

注意:ケイ素・ゲルマニウムは「半導体」

周期表の金属と非金属の境界付近に位置するケイ素(Si)やゲルマニウム(Ge)は、電気伝導性が金属(導体)と非金属(絶縁体)の中間にある半導体です。これらの元素は厳密には「非金属元素」に分類されますが、一般の金属元素とも非金属元素とも異なる性質をもちます。

3同族元素の性質の類似性

同族元素は価電子数が等しく、化学的性質がよく似ています。特に性質の類似が顕著な族には特別な名称があります。

族番号名称価電子数主な元素特徴
1族(H除く)アルカリ金属1個Li, Na, K, Rb, Cs1価の陽イオンになりやすい。水と激しく反応
2族アルカリ土類金属2個Be, Mg, Ca, Sr, Ba, Ra2価の陽イオンになりやすい。※Be・Mgは他の2族元素と性質がやや異なるため、含めない定義もある
17族ハロゲン7個F, Cl, Br, I1価の陰イオン(ハロゲン化物イオン)になりやすい。強い酸化力
18族貴ガス(希ガス)0個(閉殻)He, Ne, Ar, Kr, Xeイオンになりにくく、他の物質と反応しにくい
同族元素はなぜ似た性質をもつのか
同族元素は価電子数が等しい(例:アルカリ金属はすべて価電子1個)
化学反応は主に最外殻の電子(価電子)が関与して起こる
価電子数が同じ=電子の失いやすさ・受け取りやすさが似る=イオン化傾向・反応性が類似
同族元素は似た化学的性質を示す

たとえばアルカリ金属(Li, Na, K)はいずれも価電子が1個なので、電子を1個失って1価の陽イオンになりやすく、水と反応して水素を発生させる反応が共通して見られます。同族で下に行くほどイオン化エネルギーが小さくなるため反応性は増大します。

4元素の周期的変化

原子半径の変化

原子半径は周期表の位置によって規則的に変化します。

  • 同周期で右に行くほど小さくなる:同じ電子殻に電子が収容されつつ原子核の陽子数(正電荷)が増えるため、核が電子を強く引きつける。第2周期の原子半径:Li(0.152 nm)> Be(0.111 nm)> C(0.077 nm)> N(0.075 nm)> O(0.073 nm)> F(0.071 nm)
  • 同族で下に行くほど大きくなる:電子殻の数が増えて外側の殻が遠くなるため。1族の原子半径:Li(0.152 nm)< Na(0.186 nm)< K(0.231 nm)

イオン化エネルギーの周期的変化

第1イオン化エネルギーとは、気体状の原子から電子1個を取り去って1価の陽イオンにするのに必要な最小のエネルギーです(単位: kJ/mol)。イオン化エネルギーが小さいほど陽イオンになりやすいことを意味します。

  • 同周期で右に行くほど大きくなる傾向がある:右に行くほど有効核電荷が増大し、電子を引きつける力が強まるため。ただしBeやNで局所的な極大がみられる(電子配置の安定性による)。
  • 同族で下に行くほど小さくなる:電子殻の数が増えて最外殻電子が核から遠くなり、取り去りやすくなるため。
  • 同一周期ではアルカリ金属で最小、貴ガスで最大となる。

電気陰性度の周期的変化

電気陰性度とは、原子が共有電子対を引き寄せる強さの指標です(ポーリングの値)。電気陰性度が大きい原子ほど共有電子対を自分の方に引き寄せます。

  • 周期表の右上(貴ガスを除く)に行くほど大きい:フッ素(F)が全元素中最大(4.0)
  • 同族で下に行くほど小さくなる:電子殻の数が増えて遮蔽効果が大きくなるため
  • 電気陰性度の差が大きい原子間ほど結合の極性が大きくなる
本質:すべての周期的変化は「有効核電荷」と「電子殻の数」で説明できる

原子半径・イオン化エネルギー・電気陰性度の周期的変化は、すべて2つの要因の競合で説明できます。

①有効核電荷の増大(同周期右へ):同じ電子殻に電子が収容されながら陽子数が増えると、最外殻電子が感じる核の引力(有効核電荷)が強まります。これにより原子半径は小さくなり、イオン化エネルギー・電気陰性度は大きくなります。

②電子殻の数の増大(同族下へ):電子殻が1層増えると、内殻電子が核の正電荷を遮蔽する効果(遮蔽効果)が増大します。その結果、最外殻電子は核から離れて原子半径は大きくなり、イオン化エネルギー・電気陰性度は小さくなります。

個々の数値を丸暗記するのではなく、この2つの原理を理解すれば、周期表のどこでも傾向を自力で導くことができます。

5この章を俯瞰する

周期表と元素の周期性は、化学のほぼすべての分野の基礎となっています。ここで学んだ知識がどの章とつながるかを整理します。

  • 電子配置 → 2-3「電子配置と電子殻」:周期律の根底にある「価電子数の周期的変化」は、電子配置で理解できます。同族元素の性質類似も電子配置から導けます。
  • イオン半径 → 2-5「イオンの生成とイオン半径」:陽イオン・陰イオンの大きさも、有効核電荷と電子殻の数の観点から周期表の位置で説明できます。
  • 化学結合の極性 → 3-4「電気陰性度と結合の極性」:電気陰性度の差が結合の極性を決め、分子の極性へとつながります。
  • 酸・塩基の強弱 → 9章「酸と塩基」:非金属元素の酸化物は酸性酸化物、金属元素の酸化物は塩基性酸化物が多いなど、金属・非金属の区分が酸塩基の性質と対応します。
  • 各族元素の化学 → 15章以降「無機物質」:アルカリ金属・ハロゲン・希ガスなど族ごとの個別の化学は第5〜6編で扱います。ここで学んだ族ごとの特徴が下敷きになります。

6まとめ

  • 元素の性質が原子番号順に周期的に変化することを元素の周期律という
  • 周期表の横の行を周期、縦の列をという(1〜18族)
  • 1・2族と13〜18族が典型元素、3〜12族が遷移元素(すべて金属)
  • 典型元素の価電子数は族番号の一の位に等しい(18族は0)
  • 同族元素は価電子数が同じため化学的性質が類似する
  • 特別な名称:1族(H除く)=アルカリ金属、2族=アルカリ土類金属(ただしBe・Mgは性質がやや異なる)、17族=ハロゲン、18族=貴ガス
  • 原子半径:同周期で右へ→小さくなる、同族で下へ→大きくなる
  • イオン化エネルギー・電気陰性度:同周期で右へ→大きくなる傾向、同族で下へ→小さくなる
  • すべての周期的変化は有効核電荷の増大(同周期右へ)と遮蔽効果の増大(同族下へ)から理解できる

7確認テスト

理解度チェック

Q1. 典型元素と遷移元素それぞれで「価電子数」がどのような特徴をもつか説明してください。

▶ クリックして解答を表示 典型元素では族番号の一の位の数値が価電子数と等しく(18族は0)、原子番号が1増えるごとに価電子数も1増えます。遷移元素では最外殻電子数は1〜2個でほとんど変化しません。これは、遷移元素では原子番号が増えても内側の電子殻に電子が収容されるためです。

Q2. 同周期で右に行くほど原子半径が小さくなる理由を「有効核電荷」という言葉を使って説明してください。

▶ クリックして解答を表示 同周期では最外殻の電子殻が同じのまま陽子数(核電荷)が増えるため、最外殻電子が感じる有効核電荷が大きくなります。核が電子を強く引きつけるため電子殻が縮み、原子半径が小さくなります。

Q3. アルカリ金属(Li、Na、K)で下に行くほどイオン化エネルギーが小さくなる理由を説明してください。

▶ クリックして解答を表示 同族で下に行くほど電子殻の数が増え、最外殻電子が原子核から遠くなります。また内殻電子による遮蔽効果が大きくなり、最外殻電子が感じる有効核電荷が小さくなります。そのため電子を取り去るのに必要なエネルギー(イオン化エネルギー)が小さくなります。

Q4. ハロゲン(17族)の元素が1価の陰イオンになりやすい理由を、電子配置の観点から説明してください。

▶ クリックして解答を表示 ハロゲン元素の原子は最外殻電子が7個あります。貴ガス型の安定な電子配置(8個)まであと1個足りないため、他の原子から電子を1個受け取って1価の陰イオン(X⁻)になりやすい性質をもちます。

8入試問題演習

基礎(A)から発展(C)まで段階的に取り組んでみてください。

A 基礎レベル

2-4-1 A 基礎 選択

元素の周期表に関する次の記述のうち、正しいものをすべて選べ。

  • ① 典型元素は1・2族と13〜18族に属する元素であり、金属元素と非金属元素の両方が含まれる。
  • ② 遷移元素は3〜12族に属し、すべて非金属元素である。
  • ③ 同族元素は価電子数が等しいため、化学的性質が類似する傾向がある。
  • ④ 同周期において、右に行くほど原子半径は大きくなる。
  • ⑤ 17族元素(ハロゲン)の原子は最外殻電子を7個もち、1価の陰イオンになりやすい。
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

①③⑤

解説

① 正しい。典型元素には金属元素(Na, Mg, Alなど)と非金属元素(C, N, O, Clなど)の両方が含まれます。

② 誤り。遷移元素はすべて金属元素です(Fe, Cu, Zn, Crなど)。非金属元素ではありません。

③ 正しい。同族元素は価電子数が等しいため、電子の授受のしやすさが似ており、化学的性質が類似します。

④ 誤り。同周期では右に行くほど原子半径は小さくなります。陽子数が増えて有効核電荷が大きくなるためです。

⑤ 正しい。17族(ハロゲン)の価電子数は7個で、あと1個受け取って貴ガス型の安定な配置になろうとするため、1価の陰イオンになりやすいです。

B 標準レベル

2-4-2 B 標準 論述

第2周期(Li〜Ne)と第3周期(Na〜Ar)の元素について、以下の問いに答えよ。

(1) 第3周期の元素を原子番号順に左から並べたとき、原子半径が最大の元素と最小の元素はどれか。元素記号で答えよ(貴ガスを除く)。

(2) 第2周期と第3周期で、同族元素を比べた場合、どちらの周期の元素のイオン化エネルギーが大きいか。理由とともに答えよ。

(3) アルカリ金属(1族)とアルカリ土類金属(2族)を同一周期で比較すると、イオン化エネルギーはどちらが大きいか。理由を述べよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) 最大:Na(ナトリウム) 最小:Cl(塩素)

(2) 第2周期の元素の方が大きい。

(3) アルカリ土類金属(2族)の方が大きい。

解説

(1) 第3周期(Na〜Cl、Arを除く)では同周期の右に行くほど有効核電荷が増大するため原子半径が減少します。最も左のNa(原子番号11)が最大、最も右のCl(原子番号17)が最小です。

(2) 同族元素を第2・第3周期で比べると、第3周期の方が電子殻の数が1つ多く(最外殻がM殻)、遮蔽効果が大きいため最外殻電子が核から離れています。したがって第2周期の元素の方が電子を取り去るのに大きなエネルギーが必要であり、イオン化エネルギーが大きくなります。

(3) 同一周期ではアルカリ土類金属(2族)の方がアルカリ金属(1族)より原子番号が1大きく、有効核電荷が増大しています。そのため最外殻電子がより強く核に引きつけられており、イオン化エネルギーはアルカリ土類金属の方が大きくなります。

C 発展レベル

2-4-3 C 発展 総合

以下の記述を読み、各問いに答えよ。

元素を原子番号の順に並べると、第1イオン化エネルギーの値が周期的に変化する。同一周期内ではアルカリ金属で最も小さく、貴ガスで最も大きい。また、同族元素では原子番号が大きいほど第1イオン化エネルギーは小さくなる。

(1) 次の元素 Na, Mg, Al, Si, P, S, Cl, Ar を第1イオン化エネルギーの大きい順に並べよ。ただし、第2周期と同様の傾向が第3周期でも成り立つものとし、Pのイオン化エネルギーがSより大きいことも考慮せよ。

(2) (1)でP > S となる理由を電子配置の観点から50字以内で説明せよ。

(3) F(フッ素)のイオン化エネルギーは O(酸素)よりも大きい。また、F の電気陰性度は全元素中最大である。これらの事実から、F がハロゲン単体の中で最も強い酸化力をもつ理由を述べよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) Ar > Cl > P > S > Si > Mg > Al > Na

(2) P の最外殻(M殻)の p 軌道に電子が3つ半閉殻的に安定に収容されているため、S よりもイオン化エネルギーが大きくなる。(49字)

(3) F の電気陰性度が最大であるため、電子を引きつける力(酸化力)が最も強く、他の物質から電子を奪いやすい。またイオン化エネルギーが大きいため F⁻ は安定であり、F₂ → 2F⁻ の反応が起こりやすい。

解説

(1) 同周期では原則「右に行くほどイオン化エネルギーは大きい」ですが、Mg>AlおよびP>Sという例外があります。第3周期の傾向はNa < Al < Mg < Si < S < P < Cl < Ar となります。

(2) P(原子番号15)の電子配置は2・8・5で、M殻に5個の電子が入っています。M殻のp軌道3つに電子が1個ずつ入った「半閉殻」の状態は交換エネルギーにより特別安定です。S(原子番号16)ではp軌道1つに電子が2個入り始め、電子間反発が生じてイオン化エネルギーが下がります。これが P > S となる理由です。

(3) フッ素の電気陰性度(4.0)は全元素中最大であり、共有電子対を強く引きつける力=電子を奪う力(酸化力)が最も強くなります。また、F₂ は F−F 結合が比較的弱く(結合エネルギー 155 kJ/mol)、単体として反応しやすい状態にあることも、強い酸化力の一因です。これらの要因が組み合わさり、F₂ は全ハロゲン単体の中で最強の酸化剤として働きます。

採点ポイント(配点例:計10点)
  • (1) 完全に正しい順序(3点)、1〜2個の誤りは部分点(1点)
  • (2) 半閉殻(p軌道各1個)の安定性に言及(2点)、Sでの電子対形成・反発に言及(1点)
  • (3) 電気陰性度最大→電子を奪う力が最大(2点)、F₂の反応性に言及(2点)