アルコールはヒドロキシ基 −OH をもつ化合物です。水と混ざる・沸点が高い・ナトリウムと反応するといった特性はすべてこの −OH から生じます。
エーテルはアルコールの脱水縮合で生成し、R−O−R' の構造をもちます。
構造→性質→反応の流れを一本の筋として理解しましょう。
アルコール(R−OH)は、炭化水素の水素原子をヒドロキシ基 −OH で置換した化合物です。アルコールの名称はアルカンの語尾 -e を -ol(オール)に変えてつけます(例:メタン→メタノール、エタン→エタノール)。
分子中の −OH の数に応じて分類します。−OH を 2 個以上もつものを多価アルコールといいます。
| 分類 | 名称 | 化学式 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1価 | メタノール | CH3OH | 有毒、燃料・溶媒 |
| 1価 | エタノール | C2H5OH | 酒類の成分、消毒薬 |
| 2価 | エチレングリコール | HOCH2CH2OH | 不凍液・合成繊維原料 |
| 3価 | グリセリン | HOCH2CH(OH)CH2OH | 油脂の構成成分、保湿剤 |
−OH が結合している炭素に、他の炭化水素基が何個結合しているかで分類します。
| 分類 | 構造上の特徴 | 酸化されると | 例 |
|---|---|---|---|
| 第一級 | −OH の炭素に炭化水素基が 1 個(または 0 個) | アルデヒド → カルボン酸 | 1-プロパノール |
| 第二級 | −OH の炭素に炭化水素基が 2 個 | ケトン | 2-プロパノール |
| 第三級 | −OH の炭素に炭化水素基が 3 個 | 酸化されにくい | 2-メチル-2-プロパノール |
メタノール CH3OH の −OH の炭素には炭化水素基が 0 個しか結合していません。定義上は「−OH の炭素に結合している炭化水素基が 1 個以下」なので第一級アルコールに分類されます。入試では「第一級アルコールはアルデヒドに酸化される」という記述に対して、メタノール(→ホルムアルデヒド)も含まれることを意識してください。
アルコールのヒドロキシ基 −OH は、水分子と同様に水素結合を形成します。このため、分子量が同程度の炭化水素に比べて沸点が著しく高く、低分子量のアルコールは水に任意の割合で混和します。
メタノール(メチルアルコール)は無色で特有の臭いをもつ有毒な液体(沸点 65℃)です。水と任意の割合で混ざります。少量でも視神経を侵し、失明や死亡に至ることがあります。
エタノール(エチルアルコール)は無色で芳香をもつ液体(沸点 78℃)です。水と任意の割合で混和します。飲料(酒類)・消毒薬(70% 水溶液)・溶媒・燃料として広く利用されます。
アルコールにナトリウム Na を加えると、−OH の H が Na に置換されて水素が発生します。
2C2H5OH + 2Na → 2C2H5ONa + H2↑
生成物はナトリウムアルコキシド(例:ナトリウムエトキシド C2H5ONa)といいます。この反応はアルコールの水溶液が中性を示すこと(電離はしない)と矛盾しません。Na との反応は電離ではなく酸化還元反応です。
アルコールを適切な酸化剤(二クロム酸カリウム硫酸酸性水溶液など)で酸化すると、級数に応じて異なる生成物を与えます。
第一級アルコール → アルデヒド(−2H)→ カルボン酸(+O)
CH3CH2OH → CH3CHO → CH3COOH
第二級アルコール → ケトン(−2H)
CH3CH(OH)CH3 → CH3COCH3
第三級アルコール → 酸化されにくい
エタノールを濃硫酸とともに加熱すると、温度によって異なる脱水反応が起きます。
| 温度 | 反応の種類 | 主生成物 | 反応式 |
|---|---|---|---|
| 130〜140℃ | 分子間脱水(縮合) | ジエチルエーテル | 2C2H5OH → C2H5OC2H5 + H2O |
| 160〜170℃ | 分子内脱水(脱離) | エチレン | C2H5OH → CH2=CH2 + H2O |
「低温(130〜140℃)でエーテル、高温(160〜170℃)でアルケン」と覚えます。温度が低いうちはアルコール 2 分子が接近できてエーテルが生じ、高温になると分子内反応が優先してアルケンが生じると理解しておくと忘れにくいです。
アルコールにカルボン酸を混合して酸触媒(濃硫酸)を加えて加熱すると、エステルと水が生成します(可逆反応)。
CH3COOH + C2H5OH ⇄ CH3COOC2H5 + H2O
(酢酸 + エタノール ⇄ 酢酸エチル + 水)
エステル化の詳細は 20-4「エステルと油脂」で扱います。
エーテルは R−O−R' の構造をもち、エーテル結合(−O−)を官能基とする化合物です。2つの炭化水素基が同じ場合は「ジ〜エーテル」(例:ジエチルエーテル)、異なる場合は両者の名前を並べます。
ジエチルエーテルは無色で特有の臭いをもつ揮発性の液体(沸点 35℃)です。引火しやすく、麻酔作用があります。
エーテルの酸素原子は孤立電子対をもつため、水素結合のアクセプター(受け手)にはなれます。しかし、エーテル自身には水素結合のドナー(H−O や H−N のような活性水素)がありません。そのため、エーテル分子どうしは水素結合を形成できず、アルコールより沸点が大幅に低くなります。水(H2O)とはわずかに水素結合できますが、疎水性の炭化水素基が大きいため水への溶解性は低いです。
同じ分子式 C2H6O に対してエタノール(CH3CH2OH)とジメチルエーテル(CH3OCH3)の 2 種の構造異性体が存在します。ナトリウムと反応して水素を発生するか否か(−OH の有無)でアルコールとエーテルを区別できます。
アルコールとエーテルは脂肪族有機化合物の入口です。ここでの知識が後続の単元すべての基礎になります。
Q1. 次の構造をもつアルコールを第一級・第二級・第三級に分類せよ。
(a) CH3CH2CH2OH (b) CH3CH(OH)CH3 (c) (CH3)3COH
Q2. エタノールを濃硫酸と混合して 160〜170℃に加熱すると何が生じるか。また 130〜140℃ではどうか。
Q3. エタノール(沸点 78℃)とジエチルエーテル(沸点 35℃)の沸点の違いを分子間力の観点から説明せよ。
Q4. 第二級アルコールである 2-プロパノール(CH3CH(OH)CH3)を酸化すると何が生じるか。構造式で答えよ。
基礎(A)から発展(C)まで段階的に取り組んでください。
アルコールとエーテルに関する記述として正しいものを、次の①〜⑤からすべて選べ。
①④
② ジエチルエーテル(C4H10O)はエタノール(C2H6O)と分子式が異なるため異性体ではない。エタノールと構造異性体の関係にあるのはジメチルエーテル(CH3OCH3)。③ 第三級アルコールは酸化されにくい(ケトンは第二級アルコールの酸化で得られる)。⑤ アルコールの水溶液は中性を示す(電離しない)。①と④は正しい記述。
エタノール 23.0g を濃硫酸と混合して加熱した。
(1) 130〜140℃に加熱したとき生成する有機化合物の名称と示性式を書け。また、その化学反応式を示せ。
(2) エタノールがすべて (1) の反応に使われたとすると、生成する有機化合物は何 g か。(エタノールの分子量: 46)
(1) ジエチルエーテル、C2H5OC2H5
2C2H5OH → C2H5OC2H5 + H2O
(2) エタノール 23.0g = 23.0/46 = 0.500 mol。反応式より、エタノール 2 mol からジエチルエーテル 1 mol が生成するので、生成するジエチルエーテルは 0.250 mol。ジエチルエーテルの分子量は 74 なので、0.250 × 74 = 18.5 g
分子間脱水では 2 分子のアルコールから 1 分子のエーテルが生成します。モル比が 2:1 であることに注意してください。ジエチルエーテルの分子式は C4H10O(分子量 74)です。
分子式 C4H10O で表される化合物について、次の実験を行った。
実験 A:ナトリウムを加えると水素が発生した。
実験 B:酸化すると、銀鏡反応を示す化合物が得られた。
(1) 実験 A から、この化合物はアルコールとエーテルのどちらか判断できる。その根拠を述べよ。
(2) 実験 B の結果から、この化合物は第何級アルコールか。また、考えられる構造式をすべて示せ。
(1) アルコール。エーテルは Na と反応して水素を発生しないが、アルコールの −OH の H は Na により置換されて H2 を発生するから。
(2) 第一級アルコール。銀鏡反応を示すのはアルデヒドであり、酸化でアルデヒドが得られるのは第一級アルコールである。
構造式:CH3CH2CH2CH2OH(1-ブタノール)、(CH3)2CHCH2OH(2-メチル-1-プロパノール)
(2) 分子式 C4H10O のアルコールには 4 種類の構造異性体があります:1-ブタノール(第一級)、2-ブタノール(第二級)、2-メチル-1-プロパノール(第一級)、2-メチル-2-プロパノール(第三級)。このうち第一級アルコールは 2 種。実験 B で酸化生成物が銀鏡反応を示す(アルデヒドが得られた)ことから、第一級アルコールに絞られます。