アルデヒドとケトンはどちらもカルボニル基 C=O をもつ化合物です。
決定的な違いは還元性の有無:アルデヒドは還元性あり、ケトンは還元性なし。
銀鏡反応・フェーリング反応がアルデヒドの証拠となる検出反応です。
アルデヒド(R−CHO)は、ホルミル基(アルデヒド基)−CHO をもつ化合物です。カルボニル基(C=O)の炭素に水素原子が 1 個直接結合しているのがアルデヒドの特徴です。第一級アルコールを酸化すると得られます。
| 名称 | 化学式 | 沸点 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ホルムアルデヒド | HCHO | −19℃(気体) | 最も簡単なアルデヒド。ホルマリンの主成分 |
| アセトアルデヒド | CH3CHO | 20℃ | 酢酸の原料。揮発性の有毒液体 |
| プロピオンアルデヒド | CH3CH2CHO | 49℃ | − |
アルデヒドの C=O の炭素は酸化数が中程度であり、さらに酸化されてカルボン酸になれます。このとき相手を還元します(アルデヒド自身は酸化される)。この還元作用がアルデヒド最大の特徴です。
R−CHO → R−COOH(アルデヒド → カルボン酸)
(酸化剤を還元しながら自身は酸化される)
ケトン(R'−CO−R'')は、カルボニル基 C=O の炭素に炭化水素基が 2 個結合した化合物です。第二級アルコールを酸化すると得られます。
| 名称 | 化学式 | 沸点 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| アセトン | CH3COCH3 | 56℃ | 揮発性の液体。有機溶媒として大量使用 |
| エチルメチルケトン | CH3COC2H5 | 80℃ | − |
ケトンのカルボニル基炭素には炭化水素基が 2 個結合しているため、通常の酸化条件下ではこれ以上酸化されません。そのため、ケトンは銀鏡反応もフェーリング反応も示しません。これがアルデヒドとの最大の相違点です。
どちらも C=O をもちますが、アルデヒドは −CHO(炭素に H が 1 個ついている)ためにさらに酸化できる(還元性あり)。ケトンは C=O の炭素に炭化水素基しかついていないためそれ以上酸化できない(還元性なし)。構造の違いが化学的性質の違いを決定しています。
アンモニア性硝酸銀水溶液(トレンス試薬)にアルデヒドを加えて温めると、銀 Ag が析出して試験管内壁に鏡状に付着します。これを銀鏡反応といいます。
アルデヒドが Ag+(正確には錯イオン [Ag(NH3)2]+)を還元 → Ag が析出(銀鏡)
RCHO + 2[Ag(NH3)2]+ + 2OH− → RCOO− + 2Ag↓ + 4NH3 + H2O
ケトンはこの反応を示しません。したがって銀鏡反応の陽性・陰性によってアルデヒドとケトンを区別できます。
フェーリング液(硫酸銅 (II) に酒石酸カリウムナトリウムと水酸化ナトリウムを加えた深青色の水溶液)にアルデヒドを加えて加熱すると、酸化銅 (I) Cu2O の赤色沈殿が生じます。これをフェーリング反応(フェーリング液の還元)といいます。
アルデヒドが Cu2+ を Cu+ に還元 → Cu2O の赤色沈殿
RCHO + 2Cu2+ + 4OH− → RCOO− + Cu2O↓ + 2H2O + H+
| 検出反応 | 試薬 | アルデヒドの結果 | ケトンの結果 |
|---|---|---|---|
| 銀鏡反応 | アンモニア性硝酸銀水溶液 | 銀が析出(鏡状) | 反応なし |
| フェーリング反応 | フェーリング液 | Cu2O の赤色沈殿 | 反応なし |
ギ酸(蟻酸)HCOOH はカルボン酸ですが、−COOH の構造の中にホルミル基的な部分をもつため、銀鏡反応とフェーリング反応を示します。「銀鏡反応 = アルデヒドのみ」と思い込むと誤りです。ギ酸も例外として必ず記憶してください。
ホルムアルデヒドは最も単純なアルデヒドで、R が水素原子の場合(H−CHO)です。無色・刺激臭の有毒な気体(沸点 −19℃)で水に溶けやすい性質をもちます。
アセトアルデヒドは無色・刺激臭の揮発性の有毒な液体(沸点 20℃)で水に溶けやすい。
飲酒でとり込まれたエタノールは、酵素のはたらきでアセトアルデヒドに酸化され、さらに酢酸に酸化されます。アセトアルデヒドは毒性が強く、二日酔いの原因物質の一つです。アセトアルデヒドを分解する酵素の活性が遺伝的に低い人は、飲酒後に顔が赤くなる(フラッシング反応)傾向があります。
アルデヒドとケトンは、アルコールとカルボン酸の「中間」に位置します。酸化還元の連鎖と検出反応を軸に整理しましょう。
Q1. アルデヒドが還元性をもつ理由を簡潔に説明せよ。
Q2. フェーリング反応でアルデヒドを加えて加熱したときに生じる沈殿の色と物質名を答えよ。
Q3. アセトン(CH3COCH3)と構造異性体の関係にあり、銀鏡反応を示す化合物の示性式を書け。
Q4. ホルムアルデヒドの水溶液の名称と用途を 1 つ答えよ。
基礎(A)から発展(C)まで段階的に取り組んでください。
アルデヒドとケトンに関する記述として誤っているものを次の①〜⑤から 1 つ選べ。
③
③が誤り。アセトンはケトンであり、還元性をもたない。フェーリング反応(フェーリング液の還元)は陰性です。フェーリング反応陽性はアルデヒドのみです(例外:ギ酸も陽性)。他の記述はすべて正しい。
アルデヒドが銀鏡反応を示す理由を、アルデヒドの構造的特徴と酸化還元の観点から説明せよ。また、アセトンが銀鏡反応を示さない理由もあわせて述べよ。
アルデヒドはホルミル基 −CHO をもち、さらに酸化されてカルボン酸 −COOH になれる(自身が酸化される)。このとき相手のアンモニア性硝酸銀中の Ag+(錯イオン [Ag(NH3)2]+)を還元して Ag として析出させるため、銀鏡反応を示す。
一方、アセトンのカルボニル基炭素には炭化水素基が 2 個結合しており、通常の条件下ではこれ以上酸化できない。そのため Ag+ を還元する能力がなく、銀鏡反応を示さない。
「還元性の有無」はアルデヒドとケトンを区別する最重要ポイントです。論述問題では「アルデヒドが酸化されやすい構造的理由」と「ケトンが酸化されにくい理由」の両方を明確に書く必要があります。
分子式 C4H8O で表される化合物 A〜C がある。次の実験結果をもとに A〜C の構造式を決定せよ。
実験 1:A、B、C はいずれも 2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応した(カルボニル化合物の確認)。
実験 2:A と B は銀鏡反応を示したが、C は示さなかった。
実験 3:A を還元すると 1 種の第一級アルコールのみが得られた。B を還元すると A の還元生成物とは異なる第一級アルコールが得られた。
C(ケトン):CH3COCH2CH3(メチルエチルケトン、ブタン-2-オン)
A と B(アルデヒド):分子式 C4H8O のアルデヒドは n-ブチルアルデヒド CH3CH2CH2CHO(直鎖)とイソブチルアルデヒド (CH3)2CHCHO(分岐鎖)の 2 種。
A(還元で 1-ブタノール):CH3CH2CH2CHO(ブタナール)
B(還元で 2-メチル-1-プロパノール):(CH3)2CHCHO(2-メチルプロパナール)
実験 1 よりカルボニル化合物、実験 2 より A・B はアルデヒド、C はケトンと判明。分子式 C4H8O のケトンは CH3COCH2CH3(メチルエチルケトン)のみ。A と B は C4H8O のアルデヒド 2 種(直鎖と分岐)。実験 3 の還元で得られるアルコールの違い(A → 1-ブタノール、B → 2-メチル-1-プロパノール)により A・B を区別します。