二糖は2分子の単糖がグリコシド結合で連結した糖類です。
「還元糖か非還元糖か」という判断基準が入試の最頻出テーマ。
マルトース・スクロース・ラクトース・セロビオースを構造から理解していこう。
二糖は2分子の単糖が脱水縮合によって結合した構造をもちます。このとき形成される C-O-C 結合をグリコシド結合といいます。
単糖 + 単糖 → 二糖 + H2O(脱水縮合)
グリコシド結合はどの炭素の -OH 同士が結合するかによって種類が異なります。例えば C1 の -OH と C4 の -OH が結合すると「1,4-グリコシド結合」と呼びます。また、単糖の立体配置(α 形か β 形か)も結合に引き継がれる(α-1,4 結合、β-1,4 結合など)。
二糖の分子式はいずれも C12H22O11 であり、無色の結晶で水に溶けやすく甘みをもつものが多いです。
マルトース(麦芽糖)C12H22O11 はデンプンが酵素アミラーゼで加水分解されるときに生じる二糖です。麦芽(発芽した大麦)に多く含まれます。
マルトースはα-グルコース2分子が α-1,4-グリコシド結合 で連結した構造をもちます。C1 の α-OH と別のグルコースの C4 の -OH が脱水縮合します。
マルトース C12H22O11 + H2O → 2 グルコース C6H12O6
(触媒:希硫酸または酵素マルターゼ)
スクロース(ショ糖・砂糖の主成分)C12H22O11 は最も身近な二糖であり、サトウキビやテンサイから得られます。
スクロースはα-グルコースの C1 の -OH と β-フルクトースの C2 の -OH が脱水縮合した構造をもつ(α-1,β-2 グリコシド結合)。
この結合は両方の単糖のヘミアセタール構造(還元性を示す部位)どうしが使われて形成されます。そのため、スクロースは水溶液中で鎖状(アルデヒド型)構造に開環できず、還元性なし(非還元糖)です。
二糖の中でスクロースだけが非還元糖です。「ヘミアセタール構造同士が結合してしまったから開環できない」という構造的な理由を必ず理解しておきましょう。入試で「スクロースは還元糖か」と問われたら即答できるようにしましょう。
スクロースを希硫酸または酵素(スクラーゼ・インベルターゼ)で加水分解すると、グルコースとフルクトースが 1:1 で得られます。この混合物を転化糖といいます。
C12H22O11 + H2O → C6H12O6(グルコース) + C6H12O6(フルクトース)
転化糖はスクロースよりも甘みが強く(フルクトースが甘いため)、その水溶液は還元性を示す(グルコース・フルクトースともに還元糖)。
ラクトース(乳糖)C12H22O11 は哺乳類の乳に含まれる二糖であり、乳児の主要なエネルギー源として重要です。
乳糖不耐症はラクターゼの活性が低く、ラクトースを十分に分解できない状態。分解されなかったラクトースが腸内細菌に発酵されてガスや下痢を引き起こします。乳児期以降にラクターゼ活性が低下するのは多くの哺乳類で共通の現象であり、ヒトも例外ではありません(成人の大多数で見られる)。
セロビオース C12H22O11 はセルロースを加水分解するときに生じる二糖です。
マルトース・ラクトース・セロビオースはいずれも還元糖。スクロースだけが非還元糖。この違いは「グリコシド結合を形成した後にヘミアセタール構造(C1の-OH)が残っているかどうか」で決まります。スクロースは両方の単糖のヘミアセタール構造を使って結合するため、開環できなくなります。
| 二糖 | 構成単糖 | 結合 | 還元性 | 加水分解触媒(酵素) |
|---|---|---|---|---|
| マルトース | α-Glc + Glc | α-1,4 | あり | マルターゼ |
| スクロース | α-Glc + β-Fru | α-1,β-2 | なし | スクラーゼ・インベルターゼ |
| ラクトース | β-Gal + Glc | β-1,4 | あり | ラクターゼ |
| セロビオース | β-Glc + Glc | β-1,4 | あり | セルラーゼ |
Glc=グルコース、Fru=フルクトース、Gal=ガラクトース
Q1. スクロースが非還元糖である理由を構造の観点から述べよ。
Q2. マルトースとセロビオースはどちらもグルコース2分子からなる二糖だが、何が異なるか。
Q3. スクロースを加水分解して得られる転化糖について、(a)構成成分と(b)スクロースより甘みが強い理由を述べよ。
Q4. 次の二糖のうち還元糖をすべて答えよ:マルトース、スクロース、ラクトース、セロビオース
二糖に関する記述として誤っているものを、次の①〜⑤から1つ選べ。
④
④が誤り。スクロースは非還元糖であり、フェーリング液を還元しない。α-グルコースとフルクトースの両方のヘミアセタール構造が結合に使われているため、鎖状構造に開環できないことが理由。①②③⑤はすべて正しい。
マルトースとスクロースは、ともに分子式 C12H22O11 をもつ二糖です。
(1) マルトースを加水分解すると何が得られるか。化学式で答えよ。
(2) マルトースは還元糖だが、スクロースは非還元糖です。この違いが生じる構造的な理由を述べよ。
(1) グルコース 2C6H12O6
(2) マルトースでは、一方のグルコースのC1の-OH(ヘミアセタール構造)のみがグリコシド結合に使われ、もう一方のグルコースのC1の-OHは残っています。そのため鎖状(アルデヒド型)に開環でき還元性をもちます。一方スクロースでは、グルコースのC1とフルクトースのC2のヘミアセタール構造がともに使われてグリコシド結合が形成されるため、どちらの単糖も開環できず還元性をもちません。
「ヘミアセタール構造が残っているか否か」を軸に述べる。この観点は多糖(デンプン・セルロース)の還元性の判断にも使えるので、しっかり定着させること。デンプン・セルロースは非常に長い鎖の末端のみにヘミアセタール構造が残るが、分子量が大きすぎて実質的に還元性は無視できます。
スクロース 34.2 g を希硫酸で完全に加水分解した。
(1) 生成したグルコースとフルクトースはそれぞれ何 g か。(スクロースの分子量:342、グルコース・フルクトースの分子量:180)
(2) 得られた転化糖の水溶液にフェーリング液を加えて加熱すると、赤色沈殿が生じました。スクロース水溶液では同じ操作をしても沈殿は生じない。この理由を述べよ。
(1) スクロース 34.2 g = 0.10 mol。加水分解により Glc 0.10 mol + Fru 0.10 mol が生成。グルコース:0.10 × 180 = 18 g、フルクトース:0.10 × 180 = 18 g
(2) スクロースは非還元糖(ヘミアセタール構造をもたない)のでフェーリング液を還元できないが、加水分解で生じたグルコースとフルクトースはともに還元糖(ヘミアセタール構造をもつ)であるため、フェーリング液中の Cu2+ を還元して Cu2O(赤色沈殿)を生じます。
(1) 分子量比から:スクロース 1 mol から Glc 1 mol + Fru 1 mol が得られます。質量は 180 g/mol × 0.10 mol = 18 g ずつ。元のスクロース 34.2 g より合計 36 g 分の糖が得られるのは、加水分解で H2O(1.8 g)が加わるため(質量保存の確認:34.2 + 1.8 = 36.0 g)。