気体は種類を問わず、標準状態(0℃・1.013×105 Pa)で 1 mol あたり約 22.4 L を占めます。
この「魔法の数」が成り立つ理由はアボガドロの法則にあります。
この記事では、モル体積を使った気体の密度計算・分子量決定・混合気体の平均分子量まで一気に学びます。
気体の体積と分子数の関係については、1811年にアボガドロ(イタリア)が次の法則を提唱しました。
同温・同圧のもとで、同じ体積の気体には、気体の種類に関係なく、同じ数の分子が含まれる。
言い換えると、同温・同圧で 1 mol の分子を含む気体はどんな種類でも同じ体積を占めるということです。水素でも酸素でも二酸化炭素でも、粒子数(mol)が等しければ体積が等しくなります。
この法則は、空気のような混合気体にも成り立ちます。実験的に確かめると、窒素・ブタン・アルゴンなど種類の異なる気体を同じ温度・圧力のもとで同体積を集めると、含まれる物質量がほぼ等しくなります。
気体の体積は温度・圧力によって変わるため、比較の基準となる状態を決める必要があります。化学では次の状態を標準状態とよびます。
標準状態:0℃(273 K)、1.013×105 Pa(1 atm)
標準状態で気体 1 mol の体積を実測すると、気体の種類に関係なく約 22.4 L になります。この値を気体のモル体積といいます。
| 気体 | 分子式 | モル質量(g/mol) | 標準状態での 1 mol の体積 |
|---|---|---|---|
| 水素 | H2 | 2.0 | 22.4 L |
| メタン | CH4 | 16 | 22.4 L |
| ネオン | Ne | 20 | 22.4 L |
| 窒素 | N2 | 28 | 22.4 L |
| 酸素 | O2 | 32 | 22.4 L |
| 二酸化炭素 | CO2 | 44 | 22.4 L |
分子量がまったく異なる気体であっても、標準状態での 1 mol の体積はすべて 22.4 L になります。これがアボガドロの法則の実験的な証拠です。
例1 標準状態の水素 11.2 L の物質量は?
物質量 = 11.2 L ÷ 22.4 L/mol = 0.500 mol
例2 メタン 0.25 mol の体積は標準状態で何 L か?
体積 = 22.4 L/mol × 0.25 mol = 5.6 L
※ 高圧・低温では分子間力が無視できなくなり、22.4 L からずれます(実在気体の補正は大学で学びます)。
「常温・常圧(25℃・1 atm)」や「室温」では 1 mol の気体の体積は 22.4 L になりません。標準状態(0℃・1.013×105 Pa)のときに限り 22.4 L/mol が使えます。温度が指定されていない場合でも「標準状態」と書いてあれば 22.4 L/mol を使ってください。
単位体積あたりの質量を密度といいます。気体の密度の単位は g/L が使われます。
標準状態での気体の密度は、モル質量とモル体積から次のように求めることができます。
この式は逆向きに使うこともできます。標準状態での気体の密度を測定すれば、その気体の分子量(≒ モル質量の数値)を求められます。
例1 窒素 N2(分子量 28.0)の標準状態での密度を求めよ。
密度 = 28.0 g/mol ÷ 22.4 L/mol = 1.25 g/L
例2 標準状態での密度が 1.8 g/L である気体の分子量を求めよ。
分子量 = 1.8 g/L × 22.4 L/mol = 40.3 ≈ 40(アルゴン Ar に相当)
例3 標準状態で体積 5.6 L、質量 7.0 g の気体の分子量を求めよ。
物質量 = 5.6 L ÷ 22.4 L/mol = 0.25 mol
モル質量 = 7.0 g ÷ 0.25 mol = 28.0 g/mol → 分子量 = 28.0(窒素 N2 または一酸化炭素 CO に相当)
未知の気体の分子量を調べたいとき、気体をはかりにかける(質量を測定する)だけで分子量が求まります。これは化学の歴史上、非常に重要な実験手法でした。気体試料 1 L の質量を標準状態で測ればそれだけで分子量を計算できます。分子量 = 密度(g/L) × 22.4、これを覚えておくと便利です。
2 種類以上の気体が混ざった混合気体にも、アボガドロの法則は成り立ちます。したがって、混合気体の密度から「見かけの分子量」(平均分子量)を求めることができます。
各成分気体の分子量 × その物質量の割合(モル分率)の和が平均分子量になります。
空気は主に窒素 N2(体積比約 80%)と酸素 O2(体積比約 20%)からなります。アボガドロの法則より、同温・同圧では体積比=物質量比(モル比)なので、N2 と O2 のモル比はおよそ 4 : 1 です。
N2(分子量 28.0)の割合:4/5 = 0.80
O2(分子量 32.0)の割合:1/5 = 0.20
平均分子量 = 28.0 × 0.80 + 32.0 × 0.20 = 22.4 + 6.4 = 28.8
空気の平均分子量は約 28.8(約 29 と近似することも多い)です。これは「空気を分子量 28.8 の 1 種類の気体として扱っている」ことを意味します。
| 気体 | 分子量 | 空気との比較(平均分子量 28.8) | 空気より |
|---|---|---|---|
| 水素 H2 | 2.0 | 2.0 < 28.8 | 軽い |
| ヘリウム He | 4.0 | 4.0 < 28.8 | 軽い |
| アンモニア NH3 | 17 | 17 < 28.8 | 軽い |
| 窒素 N2 | 28 | 28 ≒ 28.8 | ほぼ同じ |
| 酸素 O2 | 32 | 32 > 28.8 | 重い |
| 二酸化炭素 CO2 | 44 | 44 > 28.8 | 重い |
| 塩素 Cl2 | 71 | 71 > 28.8 | 重い |
気体が空気より重いか軽いかを判定するには、その気体の分子量と 28.8 を比べるだけです。この比較は気体の捕集方法(上方置換・下方置換・水上置換)を選ぶ際にも重要です。
空気の平均分子量は 28.8 であり、N2(28)でも O2(32)でもありません。「空気の分子量は?」という問いに「28」や「32」と答えるのは誤りです。また、「平均分子量」は実際には 1 種類の分子があるわけではないので、見かけの分子量ともよばれます。
気体のモル体積は、物質量・質量・粒子数とならぶ「第4の変換路」です。以下に、ここでの知識が他の章とどうつながるかを整理します。
次の記事では、溶液の濃度(モル濃度)を扱います。溶質の mol と溶液の体積(L)を結びつける概念で、気体のモル体積と対をなす重要な量です。
Q1. アボガドロの法則を一文で述べてください。
Q2. 標準状態の酸素 O2 が 6.72 L あります。この酸素の物質量(mol)と質量(g)を求めてください。(O = 16.0)
Q3. 標準状態での密度が 1.96 g/L の気体の分子量を求めてください。また、この気体として考えられるものを答えてください。
Q4. 窒素 N2(体積比 78%)と酸素 O2(体積比 21%)とアルゴン Ar(体積比 1%)からなる空気の平均分子量を小数第1位まで求めてください。(N = 14.0, O = 16.0, Ar = 40.0)
基礎(A)から発展(C)まで段階的に取り組んでみてください。
気体のモル体積に関する次の記述のうち、正しいものをすべて選べ。(H = 1.0, C = 12, N = 14, O = 16)
①③④
① 正しい。アボガドロの法則より、標準状態(0℃・1.013×105 Pa)では気体の種類によらず 1 mol = 22.4 L。
② 誤り。22.4 L/mol が成り立つのは標準状態(0℃・1.013×105 Pa)のみ。25℃では体積はおよそ 24.5 L/mol になる。
③ 正しい。NH3 のモル質量 = 14 + 1.0×3 = 17 g/mol。物質量 = 34 g ÷ 17 g/mol = 2.0 mol。体積 = 22.4 L/mol × 2.0 mol = 44.8 L。
④ 正しい。空気の平均分子量 ≈ 28.8(≈ 29)。CO2 の分子量 44 > 28.8 なので CO2 は空気より重い。
⑤ 誤り。アボガドロの法則は混合気体にも成り立つ。
標準状態で密度が 2.59 g/L の気体がある。以下の問いに答えよ。(H = 1.0, C = 12, N = 14, O = 16, S = 32)
(1) この気体の分子量を求めよ。
(2) この気体として考えられる分子を答えよ。
(3) この気体 5.0 L(標準状態)の質量は何 g か。
(1) 分子量 = 2.59 g/L × 22.4 L/mol = 58.0
(2) 分子量 58 の気体:ブタン C4H10(12×4 + 1.0×10 = 58)
(3) 物質量 = 5.0 L ÷ 22.4 L/mol = 0.223 mol
質量 = 58.0 g/mol × 0.223 mol ≈ 13 g
(1) 分子量 = 密度(g/L)× 22.4(L/mol)= 2.59 × 22.4 = 58.0。
(2) 分子量 58 に相当する分子を探します。C4H10(ブタン)= 12×4 + 1.0×10 = 48 + 10 = 58。答:ブタン C4H10。
(3) 物質量 = 5.0 ÷ 22.4 ≈ 0.223 mol。質量 = 58.0 × 0.223 ≈ 12.9 g ≈ 13 g(有効数字 2 桁)。
炭素 C と水素 H のみからなる気体があり、標準状態での密度は 1.34 g/L であった。この気体に関する以下の問いに答えよ。(H = 1.0, C = 12)
(1) この気体の分子量を求めよ。
(2) この気体 0.50 mol を完全燃焼させたところ、CO2 が 22.4 L(標準状態)と H2O が 27 g 生じた。この気体の分子式を求めよ。(O = 16)
(3) この気体の空気に対する比重(空気の平均分子量を 29 として)を小数第 2 位まで求め、空気より重いか軽いかを判断せよ。
(1) 分子量 = 1.34 g/L × 22.4 L/mol = 30.0
(2) CO2 22.4 L → 物質量 = 22.4 ÷ 22.4 = 1.0 mol → C の物質量 = 1.0 mol
H2O 27 g → 物質量 = 27 ÷ 18 = 1.5 mol → H の物質量 = 1.5×2 = 3.0 mol
0.50 mol の気体から C が 1.0 mol、H が 3.0 mol 生じたので、1 mol あたり C = 2、H = 6。
よって分子式は C2H6(エタン、分子量 = 12×2 + 1.0×6 = 30)。
(3) 空気に対する比重 = 分子量 ÷ 空気の平均分子量 = 30.0 ÷ 29 ≈ 1.03。1.03 > 1 なので、この気体は空気より重い。
(1) 密度と 22.4 L/mol の積から分子量を求めます。1.34 × 22.4 = 30.0。
(2) 燃焼生成物から各元素の物質量を求め、分子式を決定します。CO2 1.0 mol から C = 1.0 mol、H2O 1.5 mol から H = 3.0 mol。気体 0.50 mol あたりなので、1 mol あたり C = 2、H = 6 より C2H6(分子量 30)。検算:エタンの完全燃焼 2C2H6 + 7O2 → 4CO2 + 6H2O より、0.50 mol の C2H6 から CO2 = 1.0 mol = 22.4 L、H2O = 1.5 mol = 27 g となり、問題のデータと一致します。
(3) 気体の空気に対する比重 = 分子量 ÷ 29。比重 > 1 なら空気より重く、下方置換で捕集します。エタン(比重 1.03)はわずかに空気より重く、下方置換が適切です。