第5章 酸・塩基と中和

中和滴定の実験と計算

濃度のわからない酸や塩基でも、濃度既知の相手と過不足なく中和させることで正確な濃度を求められます。
これが中和滴定です。実験操作・量的計算・滴定曲線と指示薬の選び方、この3点セットを体系的に理解しましょう。

1中和滴定とは

中和滴定(neutralization titration)とは、濃度未知の酸(または塩基)の水溶液を、正確な濃度がわかっている塩基(または酸)の標準溶液で完全に中和し、その濃度を決定する操作です。

酸と塩基がちょうど過不足なく中和した点を中和点といいます。中和点の前後では水溶液の pH が急激に変化するため、中和点付近に変色域をもつ指示薬の色変化を観察することで中和点を知ることができます。

標準溶液として水酸化ナトリウム NaOH 水溶液を用いる場合、NaOH 固体は空気中の水分や CO2 を吸収するため質量を正確に測れません。そこで、あらかじめ一次標準物質(シュウ酸など)を使って NaOH 水溶液の正確な濃度を決定してから実験に用います。

中和滴定の本質:「量がわかっている相手と過不足なく反応させる」

中和滴定の核心は、酸から生じる H+ の物質量 = 塩基から生じる OH の物質量 という等量関係です。「濃度 × 体積 = 物質量」の計算と組み合わせることで、未知の濃度を求めます。

2中和滴定の器具

中和滴定では目的に応じて専用のガラス器具を使い分けます。それぞれの役割と使い方の注意を正確に理解することが、正確な実験結果に直結します。

ビュレット
滴下量の精密測定

コックを操作して溶液を少しずつ滴下し、滴下量を 0.01 mL の位まで読み取る。目盛りはメニスカスの底を読む。

ホールピペット
一定体積の正確な採取

表示体積(10 mL など)を精密にはかり取る。安全ピペッターを使って吸い上げる。

コニカルビーカー
酸と塩基を反応させる容器

試料を入れて振り混ぜながら滴定を行う。口が狭い円錐形で、溶液がこぼれにくい。

メスフラスコ
正確な濃度の溶液調製

標線まで溶媒を加えることで、表示体積の溶液を正確に調製する(100 mL、250 mL など)。

加熱乾燥の禁止

ビュレット・ホールピペット・メスフラスコはいずれも加熱乾燥してはいけません。加熱するとガラスが膨張・変形し、体積の精度が失われてしまうためです。使用後は自然乾燥します。

共洗いの必要性

共洗いとは、使用する溶液でガラス器具の内部を数回すすいでから本番に使う操作です。内部が水でぬれたまま使うと、溶液の濃度が薄まって正確な測定ができなくなります。

落とし穴:共洗いをすべき器具・してはいけない器具

共洗いが必要な器具

  • ビュレット:内部が水でぬれていると、入れた標準溶液の濃度が薄まる。
  • ホールピペット:採取する試料溶液でぬれていると、はかり取った溶質の量が減る。

共洗いをしてはいけない器具

  • コニカルビーカー:共洗いすると、ホールピペットで正確にはかり取った試料の溶質の量(物質量)が増えてしまい、中和に必要な標準溶液の量が変わって測定値が狂う。
    水でぬれたままでも、溶質の総量は変わらないので問題ない。
  • メスフラスコ:調製時に純水で定容するため、共洗いは不要。共洗いすると溶質の量が増えて濃度が変わる。
コニカルビーカーを共洗いしてはいけないのはなぜか
コニカルビーカーを試料溶液で共洗いすると、壁面に試料が付着する
ホールピペットで正確に採取した溶質の物質量が増加してしまう
中和に要する標準溶液の体積が変わり、濃度計算の結果が狂う

3中和の量的関係

中和点では、酸から生じる H+ の物質量と塩基から生じる OH の物質量がちょうど等しくなります。これを式にすると次のようになります。

酸の価数 × 酸のmol数 = 塩基の価数 × 塩基のmol数

mol数 = モル濃度[mol/L] × 体積[L]

n1 × c1 × V1 = n2 × c2 × V2

n₁:酸の価数 c₁:酸のモル濃度[mol/L] V₁:酸の体積[L]
n₂:塩基の価数 c₂:塩基のモル濃度[mol/L] V₂:塩基の体積[L]

計算例 1:塩酸の濃度決定

問題

濃度不明の塩酸 10.0 mL を、0.10 mol/L の NaOH 水溶液で滴定したところ、9.38 mL を要した。塩酸のモル濃度を求めよ。

解答

HCl は1価の酸、NaOH は1価の塩基。求める濃度を c [mol/L] とすると:

1 × c × (10.0/1000) = 1 × 0.10 × (9.38/1000)

c = 0.10 × 9.38 / 10.0 = 0.094 mol/L

計算例 2:希硫酸の濃度決定

問題

ある濃度の希硫酸 10.0 mL を完全に中和するのに、0.20 mol/L の NaOH 水溶液が 8.6 mL 必要だった。希硫酸のモル濃度を求めよ。

解答

H2SO4 は2価の酸、NaOH は1価の塩基。求める濃度を c [mol/L] とすると:

2 × c × (10.0/1000) = 1 × 0.20 × (8.6/1000)

c = (0.20 × 8.6) / (2 × 10.0) = 0.086 mol/L

計算例 3:食酢(酢酸)の濃度決定

問題

市販の食酢 10.0 mL を 100 mL メスフラスコで 10 倍に薄め、その 10.0 mL を採取して 0.10 mol/L の NaOH 水溶液で滴定したところ、12.5 mL を要した。食酢中の酢酸のモル濃度を求めよ。ただし、食酢中の酸はすべて酢酸とする。

解答

CH3COOH は1価の弱酸、NaOH は1価の強塩基。希釈後の酢酸濃度を c' [mol/L] とすると:

1 × c' × (10.0/1000) = 1 × 0.10 × (12.5/1000)

c' = 0.10 × 12.5 / 10.0 = 0.125 mol/L(希釈後)

希釈前の食酢の酢酸濃度 = 0.125 × 10 = 1.25 mol/L

計算の要点:「価数を忘れずに」

H2SO4(2価)、H3PO4(3価)、Ca(OH)2(2価)など、1価でない酸・塩基が登場したとき、価数を掛け忘れると答えが 1/2 や 1/3 になります。「価数 × mol数」で H+ と OH の物質量を求めてから等量関係を立てる、という手順を意識しましょう。

4滴定曲線と指示薬の選び方

中和滴定において、加えた塩基(または酸)の体積と混合水溶液の pH との関係を表す曲線を滴定曲線(titration curve)といいます。酸・塩基の強弱の組み合わせによって曲線の形と中和点の pH が異なり、使用できる指示薬も変わります。

パターン1:強酸 + 強塩基

例:HCl + NaOH

中和点での pH は7(中性)です。中和点前後でpHが急激に変化し、曲線がほぼ垂直になる範囲が広い。生成する塩(NaCl)は加水分解しないため、水溶液は中性を示します。

使用できる指示薬:フェノールフタレイン(pH 8.0〜9.8、無色→赤色)、メチルオレンジ(pH 3.1〜4.4、赤色→黄色)のどちらも使用可。急変域がどちらの変色域も含むため。

パターン2:弱酸 + 強塩基

例:CH₃COOH + NaOH

中和点での pH は7 より大きい(塩基性側)です。生成する塩(CH3COONa)が加水分解して塩基性になるためです。また、酸が弱酸なので滴定開始時の pH が高めになり、中和点前後のpH急変域が強酸の場合より狭くなります。

使用できる指示薬:フェノールフタレイン(無色→赤色)のみ適切。メチルオレンジはpH急変域に変色域が含まれないため使用不可。

パターン3:強酸 + 弱塩基

例:HCl + NH₃水

中和点での pH は7 より小さい(酸性側)です。生成する塩(NH4Cl)が加水分解して酸性になるためです。塩基が弱塩基なので、pH急変域は酸性側にあります。

使用できる指示薬:メチルオレンジ(赤色→黄色)のみ適切。フェノールフタレインはpH急変域に変色域が含まれないため使用不可。

酸と塩基の組み合わせ 中和点のpH 生成する塩の例 フェノールフタレイン メチルオレンジ
強酸 + 強塩基 7(中性) NaCl 使用可 使用可
弱酸 + 強塩基 7より大(塩基性) CH3COONa 使用可 使用不可
強酸 + 弱塩基 7より小(酸性) NH4Cl 使用不可 使用可
弱酸 + 弱塩基 ほぼ7(どちらの強さによる) CH3COONH4 不適(急変域が不明瞭) 不適(急変域が不明瞭)
指示薬選択の考え方

「中和点がpH7より大きいか小さいか」ではなく、「pH が急激に変化する範囲(垂直部分)に、指示薬の変色域が含まれるか」で判断します。

  • フェノールフタレイン(PP):変色域 pH 8.0〜9.8。塩基性側にあるので弱酸+強塩基に必ず使える。
  • メチルオレンジ(MO):変色域 pH 3.1〜4.4。酸性側にあるので強酸+弱塩基に必ず使える。

5この章を俯瞰する

中和滴定は「中和の量的関係」「実験操作の正確さ」「滴定曲線の読み取り」が三位一体で機能することで成立します。

まず、量的関係の式(n₁c₁V₁ = n₂c₂V₂)が土台です。この式が成り立つのは「中和点では H+ と OH の物質量が等しい」という中和の本質から来ています。

次に、実験操作では「正確にはかる器具(ホールピペット・ビュレット)は共洗いして濃度を保ち、反応容器(コニカルビーカー)は共洗いしない」という原則が全体を貫きます。

最後に、滴定曲線は「中和点のpHが何性か → どの指示薬を選ぶか」を決める地図です。強酸・強塩基の組み合わせでは中和点がpH 7、弱酸が絡むと塩基性側、弱塩基が絡むと酸性側にずれる。この3パターンを押さえれば指示薬の選択を丸暗記しなくて済みます。

  • 前の内容との接続:5-3「pH の計算」で学んだ「強酸・弱酸の電離度と [H⁺]の関係」が、滴定曲線の始点pH を理解する基礎になります。
  • 後の内容との接続:6章「酸化還元反応」では、酸化還元滴定(KMnO₄ vs (COOH)₂ など)が登場します。使う器具と操作は中和滴定とほぼ同じです。
  • 入試頻出テーマ:食酢の濃度決定(弱酸+強塩基)、逆滴定(NH₃やCO₂の定量)、二段階滴定(Na₂CO₃の滴定)は計算問題の定番です。
  • 中和滴定:標準溶液を使い、中和点を指示薬で検出して未知の酸・塩基の濃度を求める操作。
  • 量的関係:n₁c₁V₁ = n₂c₂V₂(nは価数、cはモル濃度、Vは体積)。
  • 共洗いの原則:ビュレット・ホールピペットは共洗いする;コニカルビーカー・メスフラスコは共洗い不可。
  • 加熱乾燥の禁止:ビュレット・ホールピペット・メスフラスコは加熱乾燥不可。
  • 滴定曲線と指示薬:強酸+強塩基→どちらも可;弱酸+強塩基→フェノールフタレイン;強酸+弱塩基→メチルオレンジ。
  • 中和点のpH:強+強→7;弱酸+強塩基→7より大;強酸+弱塩基→7より小。

確認テスト

Q1. 中和滴定において、ビュレットとホールピペットに必要で、コニカルビーカーに不要な操作を何というか。また、コニカルビーカーにこの操作をしてはいけない理由を述べよ。

▶ クリックして答えを確認 【操作の名称】共洗い。【理由】共洗いを行うと、コニカルビーカーの壁面に付着した試料溶液によって、ホールピペットで正確にはかり取った溶質の物質量が増加してしまい、正確な測定ができなくなるため。

Q2. 0.20 mol/L の水酸化カルシウム水溶液 25.0 mL を完全に中和するのに、塩酸が 20.0 mL 必要だった。この塩酸のモル濃度を求めよ。(Ca(OH)₂ は2価の塩基、HCl は1価の酸)

▶ クリックして答えを確認 n₁c₁V₁ = n₂c₂V₂ より、1 × c × (20.0/1000) = 2 × 0.20 × (25.0/1000)。c = (2 × 0.20 × 25.0) / (1 × 20.0) = 0.50 mol/L。

Q3. 弱酸と強塩基の中和滴定では、中和点のpHは7より大きくなる。その理由を「塩の加水分解」という語を用いて説明せよ。

▶ クリックして答えを確認 弱酸と強塩基の中和で生じる塩は弱酸の陰イオンを含む。この陰イオンが水と反応(塩の加水分解)して OH⁻ を生じるため、水溶液が塩基性になり、中和点のpHは7より大きくなる。

Q4. 酢酸水溶液を水酸化ナトリウム水溶液で滴定するとき、指示薬としてフェノールフタレインとメチルオレンジのどちらが適切か。理由とともに述べよ。

▶ クリックして答えを確認 フェノールフタレイン(変色域pH 8.0〜9.8)が適切。弱酸+強塩基の中和では中和点のpHが塩基性側(7より大)にあり、pH急変域(垂直部分)がフェノールフタレインの変色域を含む。メチルオレンジ(変色域pH 3.1〜4.4)はpH急変域に含まれないため使用不可。

8入試問題演習

A 基本レベル

5-5-1 A 基本 濃度計算 器具

中和滴定によって食酢中の酢酸の濃度を求める実験を行った。次の問いに答えよ。

(1) 次のア〜エの器具のうち、使用前に共洗いが必要なものをすべて選べ。
 ア. ビュレット  イ. ホールピペット  ウ. コニカルビーカー  エ. メスフラスコ

(2) 市販の食酢 10.0 mL をメスフラスコで正確に 10 倍に薄めた。この希釈した食酢 10.0 mL をホールピペットでコニカルビーカーに採取し、フェノールフタレイン溶液を加えた後、0.100 mol/L の NaOH 水溶液でビュレットから滴定したところ、12.5 mL で中和点に達した。元の食酢中の酢酸のモル濃度を求めよ。

(3) この実験で使用する指示薬として、メチルオレンジの代わりにフェノールフタレインを用いた理由を述べよ。

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解答

(1) ア、イ

(2) 希釈後の酢酸濃度を c' とすると、
1 × c' × (10.0/1000) = 1 × 0.100 × (12.5/1000)
c' = 0.125 mol/L
元の食酢の酢酸濃度 = 0.125 × 10 = 1.25 mol/L

(3) 酢酸(弱酸)と NaOH(強塩基)の中和点では、生成した CH₃COONa が加水分解して塩基性を示すため、中和点の pH が 7 より大きくなる。この pH の急変域はフェノールフタレインの変色域(pH 8.0〜9.8)に含まれるが、メチルオレンジの変色域(pH 3.1〜4.4)には含まれないから。

解説

(1) ビュレットとホールピペットは内部が水でぬれていると使用する溶液の濃度が薄まるため共洗いが必要です。コニカルビーカーは共洗いすると試料の物質量が増えてしまうので不可。メスフラスコは標線まで純水を加えて定容するので共洗い不要です。

(2) 食酢を 10 倍希釈した後の液を使って滴定しているので、計算で得た濃度を 10 倍して元の食酢の濃度を求めます。

(3) 指示薬は「中和点付近のpH急変域に変色域が含まれる」ものを選びます。弱酸+強塩基では中和点がpH 8〜10 付近になるため、この範囲に変色域をもつフェノールフタレインが適切です。

採点ポイント((3)配点例:4点)
  • 弱酸+強塩基なので中和点が塩基性側であることに言及(2点)
  • フェノールフタレインの変色域が中和点のpH急変域に含まれることを説明(2点)

B 標準レベル

5-5-2 B 標準 滴定曲線 指示薬

0.10 mol/L の酸 a・b の水溶液をそれぞれ 10.0 mL とり、0.10 mol/L の NaOH 水溶液で滴定したところ、次の特徴をもつ滴定曲線が得られた。

  • ・酸 a:滴定開始時 pH ≈ 1、中和点(10.0 mL 時点)pH ≈ 7
  • ・酸 b:滴定開始時 pH ≈ 3、中和点(10.0 mL 時点)pH ≈ 9

(1) 酸 a と酸 b はそれぞれ強酸と弱酸のどちらか。その根拠を述べよ。

(2) 酸 b の滴定に用いる指示薬として適切なものを次から選び、色の変化も述べよ。
 ア. フェノールフタレイン  イ. メチルオレンジ

(3) もし酸 b の滴定にメチルオレンジを用いた場合、中和点を正確に検出できない理由を説明せよ。

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解答

(1) 酸 a は強酸、酸 b は弱酸。0.10 mol/L の強酸では [H⁺] = 0.10 mol/L となり pH = 1 になる。弱酸は一部しか電離しないため [H⁺] が小さく、pH が 1 より大きくなる(pH ≈ 3)。また、中和点で強酸+強塩基の塩(中性)→ pH = 7、弱酸+強塩基の塩(加水分解で塩基性)→ pH = 9 となることとも一致する。

(2) ア. フェノールフタレイン(無色→赤色)

(3) メチルオレンジの変色域(pH 3.1〜4.4)は、酸 b の滴定曲線において pH が急変する範囲(中和点付近の塩基性側)に含まれない。そのため、メチルオレンジは中和点よりもずっと手前で色が変化してしまい、正確な中和点を検出できない。

解説

(1) 同じモル濃度の酸を比べると、強酸は完全電離するため [H⁺] が大きく pH が低くなります。弱酸は部分的にしか電離しないため、同じモル濃度でも [H⁺] が小さく pH が高めになります。また、中和点のpHは、生成する塩の加水分解の程度によって決まります。

(2)(3) 指示薬の選択では、「滴定曲線でpHが急変する垂直な部分」を確認し、その範囲に変色域が入る指示薬を選びます。弱酸+強塩基では中和点がpH 8〜10 付近なので、変色域がpH 8.0〜9.8 のフェノールフタレインが最適です。

採点ポイント(配点例:計10点)
  • (1) 強酸・弱酸の判定それぞれ正解(各2点)、電離度または中和点pHを根拠にした説明(2点)
  • (2) フェノールフタレインと色の変化(2点)
  • (3) 変色域が急変域に含まれないことを説明(2点)

C 発展レベル

5-5-3 C 発展 逆滴定 計算

アンモニア NH₃ を直接中和滴定することは難しいため、次の操作で NH₃ の量を求めた。

操作:1.00 mol/L の硫酸 H₂SO₄ 水溶液 100 mL にアンモニアガスを完全に吸収させた後、未反応の H₂SO₄ を 1.00 mol/L の NaOH 水溶液で中和滴定したところ、15.0 mL を要した。

(1) この操作を何滴定というか。

(2) 吸収させたアンモニアの物質量を求めよ。

(3) このとき用いる指示薬として適切なものを選び、理由を述べよ。
 ア. フェノールフタレイン  イ. メチルオレンジ

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解答

(1) 逆滴定(back titration)

(2) 最初の H₂SO₄ の H⁺ の物質量:2 × 1.00 × (100/1000) = 0.200 mol
NaOH が中和した残余 H⁺ の物質量:1 × 1.00 × (15.0/1000) = 0.0150 mol
NH₃ が受け取った H⁺ の物質量:0.200 − 0.0150 = 0.185 mol
NH₃ は1価の塩基なので、吸収した NH₃ の物質量 = 0.185 mol

(3) イ. メチルオレンジ。未反応の H₂SO₄ を NaOH で滴定するのは強酸+強塩基の組み合わせなのでどちらも使えるが、NH₃ を吸収させた後の溶液中には NH₄⁺ が含まれ(弱酸性)、最終的な塩として NH₄Cl 的な環境になる。また、操作上の安全性からメチルオレンジが一般的に用いられる。(なお、強酸+強塩基の場合は両方使用可能が原則。)

解説

(1) 目的の物質を直接滴定できない場合、過剰の試薬を加えてから余った試薬を逆に滴定する操作を逆滴定(バック滴定)といいます。NH₃、CO₂ など気体の定量によく使われます。

(2) 最初に加えた H₂SO₄中の H⁺ の全量から、NaOH が消費した H⁺ の量を引いた残りが、NH₃ に吸収された H⁺ の量です。NH₃(1価の塩基)1 mol が H⁺ 1 mol を受け取るので、NH₃ の物質量 = H⁺ の消費量 = 0.185 mol となります。

(3) 未反応 H₂SO₄(強酸)を NaOH(強塩基)で滴定するため、原則としてフェノールフタレイン・メチルオレンジどちらも使用できます。ただし、NH₄⁺ が存在する酸性環境下での滴定では、メチルオレンジが実用上よく使われます。

採点ポイント(配点例:計12点)
  • (1) 逆滴定(2点)
  • (2) 最初のH⁺量の計算(3点)、残余H⁺量の計算(3点)、NH₃物質量の算出(2点)
  • (3) 指示薬名と根拠の説明(2点)