気体の体積は、圧力や温度によって大きく変化します。
「圧力を上げると体積が縮む」「温めると体積が増える」——これらの現象を定量的な法則として表したのが、ボイルの法則とシャルルの法則です。
この2つの法則を組み合わせると、次節で学ぶ気体の状態方程式への扉が開きます。
1662年、イギリスのロバート・ボイルは、気体を密閉容器に入れ、温度を一定に保ちながら圧力と体積の関係を調べました。その結果、「圧力を2倍にすると体積は1/2に、圧力を3倍にすると体積は1/3になる」という関係を発見しました。これをボイルの法則といいます。
一定温度のもとで、一定量の気体の体積 V は、圧力 P に反比例します。つまり P と V の積は常に一定です。
状態1(P₁, V₁)から状態2(P₂, V₂)に変化するとき、次の式が成り立ちます。
問題:1.2 × 105 Pa で 6.0 L の体積を占める気体を、同じ温度で圧縮して 1.8 × 105 Pa にすると、体積は何 L になるか。
解:ボイルの法則 P₁V₁ = P₂V₂ より、
1.2 × 105 Pa × 6.0 L = 1.8 × 105 Pa × V₂
V₂ = (1.2 × 105 × 6.0) / (1.8 × 105) = 4.0 L
圧力が 1.5 倍になったので、体積は 1/1.5 倍 = 2/3 倍になっています。
1787年、フランスのシャルルは、一定圧力のもとで気体の温度と体積の関係を調べました。温度を1℃上げるごとに、0℃のときの体積の 1/273 ずつ膨張することを発見しました。
これをグラフ化すると、セルシウス温度 t(℃)に対して体積は直線的に変化し、その直線を外挿すると、t = −273℃のとき体積が理論上ゼロになることがわかります。
−273℃(正確には −273.15℃)は、すべての粒子の熱運動が停止する温度であり、絶対零度とよばれます。これより低い温度は存在しません。
絶対零度を原点(0 K)として、セルシウス温度と同じ目盛間隔で表した温度を絶対温度(熱力学温度)といい、単位にケルビン(記号 K)を用います。
T / K = t / ℃ + 273
V/T = 一定の「T」は絶対温度(K)です。セルシウス温度(℃)をそのまま代入するのはよくあるミスです。問題文に℃で与えられていても、必ず +273 して K に換算してから計算してください。
絶対温度 T(K)を用いると、「一定圧力のもとで、一定量の気体の体積は絶対温度に比例する」ことがわかります。これがシャルルの法則です。
状態1(V₁, T₁)から状態2(V₂, T₂)に変化するとき、次の式が成り立ちます。
問題:0℃、一定圧力のもとで 3.00 L の気体を、91℃に加熱すると体積は何 L になるか。
解:T₁ = 273 K、V₁ = 3.00 L、T₂ = 273 + 91 = 364 K
シャルルの法則 V₁/T₁ = V₂/T₂ より、
V₂ = V₁ × T₂/T₁ = 3.00 L × (364 K / 273 K) = 4.00 L
ボイルの法則(温度一定)とシャルルの法則(圧力一定)を組み合わせると、圧力・体積・温度の3つが同時に変化する場合でも使える式が導けます。これをボイル・シャルルの法則といいます。
状態1(P₁, V₁, T₁)から状態2(P₂, V₂, T₂)への変化を、「温度一定で圧力・体積を変化させた中間状態(P₂, V', T₁)」を経由する2段階として考えます。
中間体積 V' を消去すると、次式が得られます。
また、1つの状態で PV/T の値は常に一定です(気体の種類や量が同じなら)。
問題:27℃、1.0 × 105 Pa で 1.0 L の気体を、17℃、8.0 × 104 Pa の条件にすると体積は何 L になるか。
解:T₁ = 273 + 27 = 300 K、T₂ = 273 + 17 = 290 K
ボイル・シャルルの法則 P₁V₁/T₁ = P₂V₂/T₂ より、
(1.0 × 105 Pa × 1.0 L) / 300 K = (8.0 × 104 Pa × V₂) / 290 K
V₂ = (1.0 × 105 × 1.0 × 290) / (300 × 8.0 × 104) ≈ 1.2 L
問題:27℃、1.0 × 105 Pa で 300 mL の気体は、127℃、2.0 × 105 Pa では何 mL になるか。
解:T₁ = 300 K、V₁ = 300 mL、T₂ = 400 K、P₂ = 2.0 × 105 Pa
V₂ = V₁ × (P₁/P₂) × (T₂/T₁) = 300 mL × (1.0/2.0) × (400/300) = 200 mL
体積の単位は mL のまま計算してよい(Pa と K が揃っていれば単位は消えない)。
この章で学んだ3つの法則は、どれも「気体分子の熱運動」という1つの考え方から導けます。
次節(8-2)では、この PV/T = 一定の左辺に物質量 n を加えた気体の状態方程式 PV = nRT を学びます。「気体定数 R」とは、PV/T を物質量で割った普遍定数です(R ≈ 8.31 × 103 Pa·L/(K·mol))。
また、実際の気体(実在気体)は、分子自身の体積や分子間力のために、高圧・低温では PV/T = 一定からわずかにずれます。入試では「理想気体」(これらを無視できる気体)として扱います。
| 法則名 | 一定の量 | 関係式 | グラフの形 |
|---|---|---|---|
| ボイルの法則 | 温度 T | PV = 一定、P₁V₁ = P₂V₂ | P-V グラフ:双曲線 |
| シャルルの法則 | 圧力 P | V/T = 一定、V₁/T₁ = V₂/T₂ | V-T グラフ:原点を通る直線 |
| ボイル・シャルルの法則 | (なし) | PV/T = 一定、P₁V₁/T₁ = P₂V₂/T₂ | 統合形 |
シャルルの法則の V-T グラフは、絶対温度 T を横軸にとれば原点を通る直線ですが、セルシウス温度 t を横軸にとると「切片が −273℃」の直線になります(原点を通りません)。入試では横軸の種類を見落とさないように注意してください。
Q1. 27℃、3.0 × 105 Pa で 1.0 L の気体を、同じ温度で体積を 2.0 L にすると圧力は何 Pa になるか。
Q2. 0℃(= 273 K)で 10.0 L の気体を、一定圧力のもとで 546 K に加熱すると体積は何 L になるか。
Q3. セルシウス温度 27℃を絶対温度に換算せよ。また、絶対温度 400 K をセルシウス温度に換算せよ。
Q4. 0℃、1.0 × 105 Pa で 6.0 L の気体を、91℃、3.0 × 105 Pa にすると体積は何 L になるか。
次の文章の空欄に適する語句または数値を入れよ。
温度一定のもとで、一定量の気体の体積は圧力に( ア )する。これをボイルの法則という。1.5 × 105 Pa で 4.0 L の気体を、同温・同物質量のまま圧力を 6.0 × 105 Pa にしたとき、体積は( イ )L になる。
ア:反比例、イ:1.0
ボイルの法則 P₁V₁ = P₂V₂ より、
1.5 × 105 Pa × 4.0 L = 6.0 × 105 Pa × V₂
V₂ = (1.5 × 4.0) / 6.0 = 1.0 L。
圧力が4倍になったので、体積は 1/4 倍(4.0 L → 1.0 L)になります。
一定量の気体について、下の各問いに答えよ。
(1) 温度が一定のとき、圧力 P と体積 V の関係をグラフで示すとどのような形になるか述べよ。また、温度を変えた場合(T₁ < T₂)、グラフはどのようにずれるか。
(2) 圧力が一定のとき、絶対温度 T と体積 V の関係を記せ。このグラフの横軸をセルシウス温度 t(℃)にした場合、グラフはどのような形になるか。
(3) 27℃、1.0 × 105 Pa で 2.0 L の気体がある。この気体を 127℃、1.5 × 105 Pa にしたとき、体積は何 L になるか。
(1) P-V グラフは反比例の双曲線(PV = 一定)。温度が高い(T₂ の)ほど曲線は右上にずれる(同じ P に対して V が大きい)。
(2) V ∝ T で、V-T グラフは原点を通る直線。横軸をセルシウス温度 t(℃)にすると、直線の切片は −273℃になる(t = −273 のとき V = 0)ため、原点を通らない直線になる。
(3) V₂ ≈ 1.8 L
(1) ボイルの法則 PV = k(定数)は双曲線を表します。温度が高いと k の値が大きくなるため(分子の熱運動が激しく同じ V でもより大きな力を及ぼす)、T₂ > T₁ のとき T₂ の曲線が T₁ より外側(右上)に位置します。
(2) シャルルの法則 V/T = k'(定数)より V = k'T で、V-T グラフは原点を通る傾き k' の直線です。横軸を t(℃)にすると T = t + 273 なので V = k'(t + 273) となり、t = −273 で V = 0 の直線、すなわち x 切片が −273℃の直線になります。
(3) T₁ = 300 K、T₂ = 400 K としてボイル・シャルルの法則を適用します。
P₁V₁/T₁ = P₂V₂/T₂ より、
(1.0 × 105 × 2.0) / 300 = (1.5 × 105 × V₂) / 400
V₂ = (1.0 × 105 × 2.0 × 400) / (300 × 1.5 × 105)
V₂ = 2.0 × (P₁/P₂) × (T₂/T₁) = 2.0 × (1.0/1.5) × (400/300) = 2.0 × (2/3) × (4/3) = 16/9 ≈ 1.8 L
体積を自由に変えることのできるシリンダーに、ある理想気体を封入した。以下の操作をそれぞれ独立して行ったとき、体積の変化を考察せよ。
(1) 温度を一定に保ちながら、圧力を最初の 1/3 倍にした。
(2) 圧力を一定に保ちながら、温度を 27℃から 327℃まで上げた。
(3) 圧力を 2 倍、絶対温度を 1/2 倍に変化させた。また、このとき PV 積はどうなるか。
(4) ある温度・圧力のもとで体積が V₀ の気体がある。圧力を 3 倍にしながら同時に絶対温度も 3 倍にしたとき、体積は何倍になるか。
(1) 体積は3倍になる。
(2) 体積は2倍になる。
(3) 体積は1/4倍になる。PV 積は1/2倍になる。
(4) 体積は変わらない(V₀のまま)。
(1) ボイルの法則 PV = 一定より、P が 1/3 倍になると V は 3 倍になります。
(2) T₁ = 300 K、T₂ = 600 K。シャルルの法則 V ∝ T より、T が 2 倍になるので V も 2 倍になります。
(3) ボイル・シャルルの法則 V ∝ T/P より、V は (1/2) / 2 = 1/4 倍。PV の変化は、新しい圧力が 2 倍、新しい V が 1/4 倍なので、PV は 2 × (1/4) = 1/2 倍になります。なお PV/T = 一定なので PV = k'' T。T が 1/2 倍になれば PV も 1/2 倍になることと一致します。
(4) V ∝ T/P より、T が 3 倍、P も 3 倍なので V は (3/3) = 1 倍(変化なし)。圧力増加と温度増加が完全に打ち消し合い、体積は V₀ のままです。これは PV/T = 一定より、P と T が同じ倍率で変化すれば V は不変であることから理解できます。