1族元素(水素を除く)は最外殻電子が1個という共通の電子配置をもつアルカリ金属です。
反応性がきわめて高く、ナトリウムNaは工業的に最も重要な金属の一つ。
「なぜ石油中に保存するのか」「ソルベー法のしくみ」まで、電子配置から一本道で理解できます。
周期表の1族元素のうち水素Hを除く6元素(Li・Na・K・Rb・Cs・Fr)をアルカリ金属といいます。すべての原子が最外殻電子を1個だけもち、イオン化エネルギーが非常に小さいため、1価の陽イオンになりやすい。この「あと1個少ない」電子配置が、アルカリ金属の高い反応性のすべての源です。
| 元素 | 炎色反応 | 融点(℃) | 密度(g/cm³) | イオン化エネルギー(kJ/mol) |
|---|---|---|---|---|
| Li(リチウム) | 赤 | 181 | 0.53 | 520 |
| Na(ナトリウム) | 黄 | 98 | 0.97 | 496 |
| K(カリウム) | 赤紫 | 64 | 0.86 | 419 |
| Rb(ルビジウム) | 赤 | 39 | 1.53 | 403 |
| Cs(セシウム) | 青紫 | 28 | 1.87 | 376 |
灯油の密度は約0.84 g/cm³です。LiはNa・Kより密度が小さい(0.53 g/cm³)ため灯油に浮き、NaとKは沈みます。「石油中に沈む=すべて」と思い込まないよう注意してください。
ナトリウムはイオン化傾向が大きいため、水溶液の電気分解ではNa単体を得られません(水溶液中ではH₂Oが先に還元されてしまう)。工業的には塩化ナトリウムNaClの溶融塩電解によって製造します。
陰極:Na⁺ + e⁻ → Na(還元)
陽極:2Cl⁻ → Cl₂ + 2e⁻(酸化)
ナトリウムを水に入れると激しく反応し、水酸化ナトリウムNaOHと水素H₂を発生します。
2Na + 2H₂O → 2NaOH + H₂↑
カリウムKはナトリウムよりもさらに激しく反応します(原子番号が大きく、イオン化エネルギーが小さいため)。
白色の固体で、水に非常に溶けやすく(溶解熱が大きい)、強塩基として機能します。空気中に放置すると水蒸気を吸収して溶ける潮解を示します。また、空気中のCO₂と反応して炭酸ナトリウムを生じます。
2NaOH + CO₂ → Na₂CO₃ + H₂O
工業的には塩化ナトリウム水溶液の電気分解(苛性ソーダ法)によって製造されます。
白色粉末で、水に少し溶けて弱い塩基性を示します。加熱すると分解してCO₂を発生するため、ベーキングパウダー(ふくらし粉)や胃腸薬に利用されます。
2NaHCO₃ → Na₂CO₃ + H₂O + CO₂↑(加熱)
白色の粉末で水に溶けて塩基性を示します。水溶液を蒸発させると炭酸ナトリウム十水和物Na₂CO₃・10H₂Oの結晶が得られます。この十水和物は空気中で結晶水の一部を失い(風解)、一水和物Na₂CO₃・H₂Oになります。ガラスや洗剤の原料として広く用いられます。
炭酸ナトリウムNa₂CO₃の工業的製法はアンモニアソーダ法(ソルベー法)とよばれ、1866年にソルベー(ベルギー)によって工業化されました。原料は塩化ナトリウム(食塩)・アンモニア・石灰石(CaCO₃)です。
ステップ1:塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアを十分に溶かし、CO₂を通じると、水に比較的溶けにくい炭酸水素ナトリウムNaHCO₃が沈殿する。
NaCl + H₂O + NH₃ + CO₂ → NaHCO₃↓ + NH₄Cl …①
ステップ2:得られたNaHCO₃を加熱分解すると炭酸ナトリウムが得られる。
2NaHCO₃ → Na₂CO₃ + H₂O + CO₂↑ …②
副生成物の処理:①で生じたNH₄Clを石灰(Ca(OH)₂)で処理してNH₃を回収し再利用する。②で生じたCO₂も循環利用する。
2NH₄Cl + Ca(OH)₂ → CaCl₂ + 2NH₃↑ + 2H₂O …③
全体の反応(副生成物は塩化カルシウム):
2NaCl + CaCO₃ → Na₂CO₃ + CaCl₂
アンモニアは反応①でNH₄Clになりますが、反応③で再生されて循環利用されます。実質的な消費物はNaClとCaCO₃(石灰石)のみ。安価な原料から大量のNa₂CO₃を得られる合理的なプロセスです。
反応①では4種類のイオン(Na⁺、Cl⁻、NH₄⁺、HCO₃⁻)が共存しますが、NaHCO₃だけが溶解度が小さく沈殿します。NH₄Clはよく溶けるため沈殿しません。これがソルベー法の核心です。
アルカリ金属の知識は無機化学・工業化学の中核として、他の分野と深くつながっています。
Q1. アルカリ金属を石油中に保存する理由を述べよ。
Q2. アルカリ金属の原子番号が大きくなるほどイオン化エネルギーが小さくなる理由を述べよ。
Q3. ソルベー法のキーとなる反応(NaHCO₃が沈殿する反応)を化学反応式で書き、なぜNaHCO₃だけが沈殿するか説明せよ。
Q4. 炭酸水素ナトリウムを加熱したときの変化を化学反応式で示し、この性質がベーキングパウダーに使われる理由を述べよ。
基礎(A)から発展(C)まで段階的に取り組んでみてください。
アルカリ金属に関する記述として正しいものを、次の①〜⑤からすべて選べ。
①③④
②が誤り。密度はLi(0.53 g/cm³)< K(0.86 g/cm³)< Na(0.97 g/cm³)の順で、すべて1 g/cm³未満ですが、Rb(1.53 g/cm³)、Cs(1.87 g/cm³)は1 g/cm³より大きく、水に沈みます。
⑤が誤り。アルカリ金属は水とも激しく反応するため、水中に保存することはできません。正しくは石油(灯油)中に保存します。
炭酸ナトリウムNa₂CO₃の工業的製法(ソルベー法)について、次の各問に答えよ。原子量:Na=23、C=12、O=16、Cl=35.5、Ca=40。
(1) 塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を通じたときの反応を化学反応式で示せ。
(2) (1)で得られた沈殿を加熱したときの反応を化学反応式で示せ。
(3) 炭酸ナトリウム106 gを製造するには、塩化ナトリウムは少なくとも何g必要か。
(1) NaCl + H₂O + NH₃ + CO₂ → NaHCO₃↓ + NH₄Cl
(2) 2NaHCO₃ → Na₂CO₃ + H₂O + CO₂↑
(3) 117 g
(3) Na₂CO₃のモル質量 = 23×2+12+16×3 = 106 g/mol
106 g のNa₂CO₃は1 mol。全体の反応式 2NaCl + CaCO₃ → Na₂CO₃ + CaCl₂ より、Na₂CO₃ 1 molに対しNaCl 2 molが必要。NaCl 2 mol = 58.5×2 = 117 g。
ソルベー法では副生成物として塩化カルシウムCaCl₂が生じる。この工程全体を1つの化学反応式にまとめると 2NaCl + CaCO₃ → Na₂CO₃ + CaCl₂ となる。以下の問いに答えよ。
(1) アンモニアは最終的に回収・再利用される。このときの反応を化学反応式で示せ。
(2) ソルベー法では塩化カルシウムCaCl₂が多量に副生するが、現在この用途として何が挙げられるか。2つ答えよ。
(3) ソルベー法が発明される以前のルブラン法(NaCl+H₂SO₄→Na₂SO₄→ Na₂CO₃)では有毒なHClガスが副生した。ソルベー法の環境面での優位性を説明せよ。
(1) 2NH₄Cl + Ca(OH)₂ → CaCl₂ + 2NH₃↑ + 2H₂O
(2) 道路の凍結防止剤(融雪剤)・乾燥剤
(3) ソルベー法では有毒なHClガスが副生しない。アンモニアは循環利用されるため廃棄物が少なく、有害な副生物を大気中に排出しない点でルブラン法より環境負荷が小さい。
(1) ①で生じたNH₄Clを、②の加熱時に副生するCO₂から得たCaOを消石灰Ca(OH)₂に変えて処理する。弱塩基の遊離反応(NH₃は弱塩基、Ca(OH)₂は強塩基)です。
(3) 論述では「ルブラン法の問題点(HCl排出)」と「ソルベー法の改善点(NH₃循環・無害)」を対比して書くと得点しやすい。