第16章 典型金属元素

2族元素(アルカリ土類金属)

2族元素はすべて最外殻電子2個をもつアルカリ土類金属です。
カルシウムCaの化合物は身のまわりに広く存在し、CaO・Ca(OH)₂・CaCO₃・CaSO₄の変換関係が入試の核心。
「石灰石 → 生石灰 → 消石灰」の一本道を、反応式と用途を紐づけながら理解しましょう。

12族元素の性質

電子配置と共通性質

2族元素はすべて金属元素で、アルカリ土類金属とよばれます(ただし歴史的な分類ではBeとMgを除く場合もあります)。原子は価電子を2個もち、2価の陽イオン(Be²⁺、Mg²⁺、Ca²⁺など)になりやすい傾向は原子番号が大きいほど強くなります。

元素融点(℃)密度(g/cm³)水との反応性炎色反応
Be(ベリリウム)12821.85反応しない示さない
Mg(マグネシウム)6491.74熱水と反応示さない
Ca(カルシウム)8391.65常温の水と激しく反応橙赤色
Sr(ストロンチウム)7692.54常温の水と激しく反応赤(紅)色
Ba(バリウム)7293.59常温の水と激しく反応黄緑色

アルカリ金属との比較

  • 同周期のアルカリ金属と比べて融点が高く、密度が大きい
  • 反応性は周期表の下にいくほど高くなる(原子番号が大きいほどイオン化エネルギーが小さい)
  • BeとMgは炎色反応を示さない(他のアルカリ土類金属は示す)
  • 単体は溶融塩電解で製造する(イオン化傾向が大きく、水溶液の電気分解では得られない)

カルシウムCaの単体

銀白色の軽くてやわらかい金属。常温の水と激しく反応して水素を発生します。

Ca + 2H₂O → Ca(OH)₂ + H₂↑

マグネシウムMgの単体

銀白色の軽くてやわらかい金属。空気中で強熱すると明るい白色の光を発して燃焼します。

2Mg + O₂ → 2MgO

落とし穴:アルカリ土類金属の水溶性は規則がある

水酸化物(Mg(OH)₂は難溶、Ca(OH)₂は少し溶ける、Sr(OH)₂・Ba(OH)₂はよく溶ける)、炭酸塩(すべて難溶)、硫酸塩(MgSO₄はよく溶ける、CaSO₄は少し溶ける、SrSO₄・BaSO₄は難溶)は入試頻出です。特にBaSO₄は白色沈殿として硫酸イオンの検出に使われます。

2カルシウムの化合物

酸化カルシウムCaO(生石灰)

生石灰ともよばれる白色の固体。石灰石(CaCO₃)を強熱する(熱分解する)ことで得られます。

CaCO₃ → CaO + CO₂↑(強熱)

CaOは水と反応して激しく発熱し、水酸化カルシウムを生じます。この発熱反応を利用して発熱剤(加熱型弁当、カイロ)乾燥剤に用いられます。

CaO + H₂O → Ca(OH)₂ (発熱)

水酸化カルシウムCa(OH)₂(消石灰)

消石灰ともよばれる白色の粉末。水に少し溶けて強い塩基性を示します(ただしMg(OH)₂より溶けやすい)。

Ca(OH)₂の飽和水溶液を石灰水といい、二酸化炭素を通じると炭酸カルシウムCaCO₃の白色沈殿が生じるため、CO₂の検出に利用されます。

Ca(OH)₂ + CO₂ → CaCO₃↓ + H₂O …①(白濁)

CaCO₃ + H₂O + CO₂ → Ca(HCO₃)₂ …②(さらにCO₂を通じると再溶解)

石灰水にCO₂を通じすぎると白濁が消えるのはなぜか
①の反応でCaCO₃(難溶)が沈殿 → 白濁
さらにCO₂を通じると②の反応が進む
CaCO₃ + CO₂ + H₂O → Ca(HCO₃)₂(炭酸水素カルシウム・水溶性)
難溶のCaCO₃が溶解 → 白濁が消えて透明に戻る

Ca(OH)₂は漆喰(しっくい)や酸性土壌の改良剤にも用いられます。漆喰に含まれるCa(OH)₂が空気中のCO₂と反応してCaCO₃になることで固まります(①式の反応)。

炭酸カルシウムCaCO₃(石灰石・大理石)

石灰石・大理石・貝殻の主成分として天然に広く存在します。塩酸を加えるとCO₂が発生します(弱酸遊離)。

CaCO₃ + 2HCl → CaCl₂ + H₂O + CO₂↑

セメント・ガラスの原料、歯みがき粉、チョーク、顔料などに幅広く利用されます。

硫酸カルシウムCaSO₄(石膏・セッコウ)

天然にはセッコウ(硫酸カルシウム二水和物、CaSO₄·2H₂O)として産出します。これを約140℃に加熱すると焼きセッコウ(CaSO₄·½H₂O)になります。

CaSO₄·2H₂O → CaSO₄·½H₂O + 3/2 H₂O(約140℃)

焼きセッコウを水で練ると発熱しながら膨張し、再びセッコウになって固まります。この性質を利用して医療用ギプス・建築材料・彫刻型などに用いられます。

本質:カルシウム化合物の変換を一本道で覚える

CaCO₃(石灰石)→強熱→ CaO(生石灰)→水を加える→ Ca(OH)₂(消石灰)→CO₂を通じる→ CaCO₃(石灰石に戻る)

この循環を逆にたどれるかが入試の鍵。各矢印に反応式と用途を対応させて覚えておきましょう。

3セメントの化学(発展)

発展:セメントの原料と製造発展

セメントはおもに石灰石CaCO₃・粘土・ケイ砂SiO₂を原料として製造されます。これらを混合して高温(約1450℃)で焼成すると、ケイ酸カルシウム(3CaO·SiO₂)や アルミン酸カルシウム(3CaO·Al₂O₃)などの複合酸化物が生成します。

セメントに水を加えると水和反応が起こり、徐々に硬化します(「水和熱」と呼ばれる発熱を伴う)。これがコンクリートの固化のしくみです。ソーダ石灰ガラスの原料(ケイ砂+炭酸ナトリウム+石灰石)とは異なる用途で石灰石が使われていることに注意しましょう。

4この章を俯瞰する

アルカリ土類金属の知識は、自然現象・工業・医療と幅広くつながっています。

  • 鍾乳洞の形成 → 15-4「炭素・ケイ素」:Ca(HCO₃)₂⇌CaCO₃ の平衡が鍾乳洞の形成と崩壊を説明する。ルシャトリエの原理の好例。
  • 溶解度積 → 14-6「溶解度積」:BaSO₄やCaSO₄の溶解度積から、なぜBaSO₄が析出しやすいか定量的に議論できる。
  • 酸・塩基の強さ → 14-4「電離平衡」:Ca(OH)₂は強塩基、Mg(OH)₂は弱塩基。電離度の違いが実用的な用途の違いにつながる。
  • ガラス・セメント → 15-7「ケイ素・ガラス」:CaCO₃が原料となるソーダ石灰ガラス、セメントの製造原理を関連させて学ぶ。

5まとめ

  • アルカリ土類金属:2族元素、最外殻電子2個、2価の陽イオンになりやすい
  • Be・Mgは炎色反応を示さない;Ca(橙赤)、Sr(赤)、Ba(黄緑)は示す
  • Mgは熱水と反応、Ca・Sr・Baは常温の水と激しく反応
  • CaO(生石灰):CaCO₃を強熱 → 水と反応して発熱 → Ca(OH)₂(乾燥剤・発熱剤)
  • Ca(OH)₂(消石灰):石灰水。CO₂検出(白濁)、CO₂過剰で再溶解
  • CaCO₃(石灰石):天然に広く存在、セメント・ガラス原料
  • CaSO₄(セッコウ):焼きセッコウ → 水で練ると膨張固化 → ギプス・型材

6確認テスト

Q1. 石灰水にCO₂を大量に通じると白濁が消える理由を、化学反応式を示して説明せよ。

▶ クリックして解答を表示まずCa(OH)₂ + CO₂ → CaCO₃↓ + H₂O で白色沈殿(CaCO₃)が生じるが、さらにCO₂を通じるとCaCO₃ + H₂O + CO₂ → Ca(HCO₃)₂ の反応が起こり、水溶性の炭酸水素カルシウムCa(HCO₃)₂が生成して沈殿が溶けるから。

Q2. CaO(生石灰)の製法と、水との反応を化学反応式で示せ。

▶ クリックして解答を表示製法:CaCO₃ → CaO + CO₂↑(強熱) 水との反応:CaO + H₂O → Ca(OH)₂(発熱)

Q3. アルカリ土類金属のうち、常温の水と反応しないものをすべて挙げよ。

▶ クリックして解答を表示ベリリウムBe(水と反応しない)とマグネシウムMg(熱水とのみ反応)。

Q4. 焼きセッコウに水を加えると固まる理由を述べよ。

▶ クリックして解答を表示焼きセッコウ(CaSO₄·½H₂O)は水と反応してCaSO₄·2H₂O(セッコウ)に戻る水和反応が起こり、この際に体積が膨張して固化するから。

7入試問題演習

基礎(A)から発展(C)まで段階的に取り組んでみてください。

A 基礎レベル

16-2-1 A 基礎 選択

カルシウムの化合物に関する記述として誤っているものを、次の①〜⑤から1つ選べ。

  • ① 酸化カルシウムCaOは石灰石を強熱することで得られる。
  • ② 水酸化カルシウムCa(OH)₂は水に溶けて強塩基性を示す。
  • ③ 炭酸カルシウムCaCO₃は大理石の主成分である。
  • ④ 石灰水に少量のCO₂を通じると白濁するが、さらに過剰に通じても変化しない。
  • ⑤ 硫酸カルシウム二水和物(セッコウ)を約140℃で加熱すると焼きセッコウが得られる。
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

解説

④が誤り。石灰水に少量のCO₂を通じるとCaCO₃の白色沈殿が生じるが、さらに過剰にCO₂を通じるとCaCO₃ + H₂O + CO₂ → Ca(HCO₃)₂ の反応が起こり、水溶性のCa(HCO₃)₂が生成して白濁が消えて透明に戻ります。

B 標準レベル

16-2-2 B 標準 論述・計算

次の文章を読み、各問に答えよ。原子量:Ca=40、C=12、O=16、H=1。

石灰岩(主成分CaCO₃)に塩酸を加えると気体が発生する。また、石灰岩地帯ではCO₂を含む雨水が石灰岩を溶かして鍾乳洞が形成される。

(1) 石灰岩に塩酸を加えたときの反応を化学反応式で示せ。

(2) 鍾乳洞が形成されるしくみを、関係する化学反応式を示して説明せよ。

(3) CaCO₃ 50.0 gから生成するCaOの質量(g)を求めよ。

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

(1) CaCO₃ + 2HCl → CaCl₂ + H₂O + CO₂↑

(2) CaCO₃ + H₂O + CO₂ → Ca(HCO₃)₂。CO₂を含む雨水が地下に浸透すると、石灰岩(CaCO₃)が水溶性のCa(HCO₃)₂に変化して溶け出し、地下に空洞(鍾乳洞)が形成される。

(3) 28.0 g

解説

(3) CaCO₃のモル質量100 g/mol、CaOのモル質量56 g/mol。CaCO₃ 50.0 g = 0.500 mol → CaO 0.500 mol = 56×0.500 = 28.0 g。

C 発展レベル

16-2-3 C 発展 論述

アルカリ土類金属の硫酸塩の溶解性は Be・Mg では大きく、Ca では小さく、Sr・Ba ではほぼ溶けない。一方、水酸化物の溶解性は逆に、Be・Mg では小さく、Ca では少し溶け、Ba ではよく溶ける傾向がある。この規則性を利用して、以下の問いに答えよ。

(1) 硫酸バリウムBaSO₄が水に難溶であることを利用した実験操作を1つ述べよ。

(2) BaCl₂水溶液とNa₂SO₄水溶液を混合したときの変化を化学反応式で示せ。

(3) Ba²⁺イオンを含む溶液が人体にとって有害であるにもかかわらず、BaSO₄が消化管X線検査の造影剤として使われる理由を説明せよ。

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解答

(1) 硫酸イオンSO₄²⁻の検出(BaSO₄の白色沈殿生成の確認)

(2) BaCl₂ + Na₂SO₄ → BaSO₄↓ + 2NaCl

(3) BaSO₄は水に極めて難溶であるため、消化管内でもほとんど溶解せず、Ba²⁺として体内に吸収されない。X線を吸収する性質によって消化管の輪郭を鮮明に描き出せる一方、体内への吸収がないため毒性を示さない。

解説

(3) 「溶解度積が非常に小さい → Ba²⁺として溶出しない → 消化管に留まる」という論理構造を書くと満点。X線吸収能(重い元素Baの特性)と毒性の無さの両方に触れることが重要です。