H2・O2・Cl2・HCl・NH3・CO2・SO2・NO・NO2・H2S の10種類の気体を一覧で整理します。
製法の反応式・捕集方法・乾燥剤・検出法をひとつの記事でまとめて確認し、入試で問われる「乾燥剤の落とし穴」も押さえましょう。
実験室での発生反応式・主な原料・捕集法・使用できる乾燥剤をまとめます。
| 気体 | 分子量 | 実験室的製法(反応式) | 捕集法 | 使用できる乾燥剤 |
|---|---|---|---|---|
| H2 | 2.0 | Zn + H2SO4 → ZnSO4 + H2↑ | 水上置換 | 濃硫酸・塩化カルシウム・十酸化四リン |
| O2 | 32 | 2H2O2 →(MnO2触媒)→ 2H2O + O2↑ | 水上置換 | 濃硫酸・塩化カルシウム・十酸化四リン・ソーダ石灰 |
| Cl2 | 71 | MnO2 + 4HCl → MnCl2 + 2H2O + Cl2↑(加熱) | 下方置換 | 濃硫酸(ソーダ石灰は不可) |
| HCl | 36.5 | NaCl + H2SO4 → NaHSO4 + HCl↑(加熱) | 下方置換 | 濃硫酸・十酸化四リン(ソーダ石灰は不可) |
| NH3 | 17 | 2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2H2O + 2NH3↑(加熱) | 上方置換 | ソーダ石灰(濃硫酸・塩化カルシウムは不可) |
| CO2 | 44 | CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2↑ | 下方置換 | 濃硫酸・塩化カルシウム・十酸化四リン(ソーダ石灰は不可) |
| SO2 | 64 | Cu + 2H2SO4(濃)→ CuSO4 + 2H2O + SO2↑(加熱) | 下方置換 | 濃硫酸・十酸化四リン(ソーダ石灰は不可) |
| NO | 30 | 3Cu + 8HNO3(希)→ 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO↑ | 水上置換 | (水上置換のため乾燥操作なし) |
| NO2 | 46 | Cu + 4HNO3(濃)→ Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2↑ | 下方置換 | 濃硫酸・十酸化四リン(ソーダ石灰は不可) |
| H2S | 34 | FeS + H2SO4 → FeSO4 + H2S↑ | 下方置換 | 塩化カルシウム(濃硫酸はH2Sと反応するため不可) |
捕集法は①水への溶解性、②空気との密度比、の2つで決まります。
| 捕集法 | 使う条件 | 該当気体の例 |
|---|---|---|
| 水上置換 | 水に溶けにくい(分子量は関係ない) | H2, O2, N2, CO, NO |
| 上方置換 | 水に溶けやすく、空気より軽い(分子量 < 29) | NH3(分子量17) |
| 下方置換 | 水に溶けやすく、空気より重い(分子量 > 29) | Cl2, HCl, CO2, SO2, NO2, H2S |
上方・下方置換は空気との置換なので、どうしても空気が混入します。純粋な気体を得るには水上置換が最も適していますが、水に溶ける気体には使えません。
乾燥剤は「乾燥させたい気体と反応しない」ものを選ぶことが大原則です。
| 乾燥剤 | 性質 | 使えない気体 | 使える気体例 |
|---|---|---|---|
| 濃硫酸 H2SO4 | 酸性 | NH3(中和),H2S(酸化) | H2, O2, Cl2, HCl, CO2, SO2, NO2 |
| 塩化カルシウム CaCl2 | 中性 | NH3(CaCl2·8NH3 を形成) | H2, O2, Cl2※, CO2, HCl, H2S |
| 十酸化四リン P4O10 | 酸性(最強の乾燥力) | NH3(中和) | H2, O2, Cl2, HCl, CO2, SO2, NO2 |
| ソーダ石灰(NaOH+CaO) | 塩基性 | 酸性気体(HCl, CO2, SO2, NO2, H2S, Cl2)全般 | NH3, H2, O2, N2 |
NH3 は塩基性の気体です。酸性乾燥剤の濃硫酸と反応して中和してしまいます。
2NH3 + H2SO4 → (NH4)2SO4(NH3 が消費される!)
NH3 の乾燥には必ずソーダ石灰(塩基性乾燥剤)を使います。
Cl2 は酸性気体です。塩基性乾燥剤のソーダ石灰(NaOH+CaO)と反応して吸収されてしまいます。
Cl2 + 2NaOH → NaCl + NaClO + H2O(Cl2 が消えてしまう!)
Cl2 の乾燥には濃硫酸(液体なのでバブリングで乾燥)を使います。
H2S(還元剤)と濃H2SO4(酸化剤)は酸化還元反応を起こします。
H2S + H2SO4 → S + SO2 + 2H2O(H2S が分解される!)
H2S の乾燥には塩化カルシウムを使います。
塩化カルシウムは NH3 と錯体 CaCl2·8NH3 を形成してしまうため、NH3 の乾燥には使えません。
| 気体 | 検出方法 | 変化・結果 |
|---|---|---|
| H2 | 点火する | 青白い炎で燃焼。試験管口に青い炎が見える |
| O2 | 火のついた線香を近づける | 線香が激しく燃える(助燃性) |
| Cl2 | 湿った赤色リトマス紙を近づける | 青変後、脱色(漂白)される。黄緑色・刺激臭も特徴 |
| HCl | アンモニアを近づける | 白煙(NH4Cl)が生じる |
| NH3 | 湿った赤色リトマス紙を近づける 塩化水素を近づける |
赤→青(塩基性) 白煙(NH4Cl)が生じる |
| CO2 | 石灰水(Ca(OH)2 水溶液)を通じる | 白濁(CaCO3 の沈殿)する |
| SO2 | 品紅液(フクシン溶液)を通じる | 品紅液が脱色される(漂白作用) |
| NO | 空気(酸素)と接触させる | 直ちに赤褐色の NO2 に変化する(2NO + O2 → 2NO2) |
| NO2 | 色の観察・水と反応させる | 赤褐色の気体。水に溶けて強酸性(3NO2 + H2O → 2HNO3 + NO) |
| H2S | 酢酸鉛(II)紙を近づける | 黒変(PbS の生成)。腐卵臭も特徴 |
Q1. NH3 の捕集に下方置換が使えない理由を説明せよ。
Q2. H2S の乾燥に濃硫酸を用いてはいけない理由を化学反応式を使って説明せよ。
Q3. NO を水上置換で捕集する理由を2つ答えよ。
次の気体(ア)〜(オ)について、最も適切な捕集方法を下の①〜③からそれぞれ一つ選べ。また、使用できる乾燥剤を後の④〜⑦からすべて選べ。
(ア)NH3 (イ)CO2 (ウ)H2 (エ)Cl2 (オ)H2S
【捕集法】 ① 水上置換 ② 上方置換 ③ 下方置換
【乾燥剤】 ④ 濃硫酸 ⑤ 塩化カルシウム ⑥ 十酸化四リン ⑦ ソーダ石灰
(ア)NH3:② 上方置換、乾燥剤:⑦ ソーダ石灰のみ
(イ)CO2:③ 下方置換、乾燥剤:④⑤⑥
(ウ)H2:① 水上置換、乾燥剤:④⑤⑥⑦
(エ)Cl2:③ 下方置換、乾燥剤:④ 濃硫酸のみ(⑦は不可)
(オ)H2S:③ 下方置換、乾燥剤:⑤ 塩化カルシウムのみ(④は酸化されるため不可)
NH3:分子量17で空気より軽い(上方置換)。塩基性なので酸性・中性乾燥剤は不可。ソーダ石灰のみ使用可。
Cl2:酸性気体なのでソーダ石灰(塩基性)は Cl2 を吸収してしまい不可。
H2S:H2S は還元剤なので、酸化剤である濃H2SO4 と反応してしまう。
次の操作で発生する気体の名称と化学反応式を書け。
(1)硫化鉄(II) FeS に希硫酸を加える。
(2)塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの混合物を加熱する。
(3)銅に濃硝酸を加える。
(1)硫化水素(H2S)
FeS + H2SO4 → FeSO4 + H2S↑
(2)アンモニア(NH3)
2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2H2O + 2NH3↑
(3)二酸化窒素(NO2)
Cu + 4HNO3(濃)→ Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2↑
(1)は弱酸の塩(FeS)に強酸を加える弱酸遊離反応。
(2)は弱塩基の塩(NH4Cl)に強塩基を加える弱塩基遊離反応。加熱が必要なのは NH3 を十分発生させるため。
(3)Cu は濃HNO3(強酸化剤)と反応して NO2 を発生。希HNO3 だと NO が発生する(覚えるべき区別点)。
ある気体 X を発生させ、次の操作を順番に行った。操作結果から気体 X を特定し、その理由を述べよ。
操作①:湿った赤色リトマス紙を近づけた → 青変した後、脱色された
操作②:濃硫酸に通じた後、下方置換で捕集した
気体 X は塩素(Cl2)
操作①:赤色リトマスが青変(塩基性)してから脱色(漂白)された。塩基性を示す気体で漂白作用があるのは一見 NH3 に見えるが、NH3 に漂白作用はない。実際には Cl2 が水と反応して HClO を生じ、HClO がリトマスを漂白する。青変は Cl2 が水に溶けて生じた H+ と OCl− のうち、OH− の共存により一瞬塩基性を示した後に脱色が起きたもの。
操作②:濃硫酸で乾燥(Cl2 は濃硫酸と反応しない)、下方置換(Cl2 の分子量71 > 29)も Cl2 の特性に合致する。