アルミニウムAlは地殻中で最も多い金属元素です。軽くて電気を通し、酸にもアルカリにも溶ける両性金属という三重の特徴をもちます。
「なぜアルカリに溶けるのか」「なぜ濃硝酸には溶けないのか」まで、電子の動きから理解できます。
製錬(ホール・エルー法)の原理も入試頻出です。
アルミニウム(融点660℃)は密度が2.70 g/cm³と比較的小さく、銀白色の金属です。延性・展性に富み、電気伝導性がよい。これらの性質から窓枠などの建築材料、アルミ缶、一円硬貨、送電線などに広く利用されています。
空気中では表面に薄い酸化アルミニウムAl₂O₃の被膜(酸化皮膜)が生じ、内部への酸化が進行しにくくなります。
4Al + 3O₂ → 2Al₂O₃
人工的にこの酸化皮膜を厚くしたものをアルマイトといい、耐食性をさらに高めた加工品として利用されます。
また、濃硝酸とは反応しない(不動態を形成する)。濃硝酸中では表面に酸化皮膜が形成されて内部が保護されるため、反応が進行しません。
濃硝酸・濃硫酸で不動態を形成する金属はFe(鉄)・Al(アルミニウム)・Ni(ニッケル)が代表的です(入試頻出)。「アルミニウムは酸に溶ける両性金属」ですが、濃硝酸には溶けないという例外を押さえておきましょう。
アルミニウムは塩酸とも水酸化ナトリウム水溶液とも反応して水素H₂を発生しながら溶けます。酸とも強塩基とも反応する性質を両性といい、この性質を示す金属を両性金属といいます(Al・Sn・Pb・Znが代表例)。
2Al + 6HCl → 2AlCl₃ + 3H₂↑ (塩酸との反応)
2Al + 2NaOH + 6H₂O → 2Na[Al(OH)₄] + 3H₂↑ (NaOH水溶液との反応)
Al³⁺は電荷が+3で非常に電荷密度が高い。そのため酸中ではAl³⁺として(酸化剤に電子を渡す)、塩基中では[Al(OH)₄]⁻錯イオンとして(OH⁻と配位結合する)、どちらの環境でも安定に存在できます。これが「両性」の化学的本質です。
アルミナともよばれ、きわめて硬く(モース硬度9)、純粋なものは無色透明。融点が高く(2054℃)、水には溶けにくい。微量の不純物を含む天然のAl₂O₃はルビー(Cr³⁺含有、赤色)やサファイア(Fe・Ti含有、青色)として知られます。
Al₂O₃は酸とも強塩基とも反応する両性酸化物です。
Al₂O₃ + 6HCl → 2AlCl₃ + 3H₂O (酸との反応)
Al₂O₃ + 2NaOH + 3H₂O → 2Na[Al(OH)₄] (塩基との反応)
Al³⁺を含む水溶液にアンモニア水や少量のNaOH水溶液を加えると、白色ゲル状の沈殿として析出します。
Al³⁺ + 3OH⁻ → Al(OH)₃↓(白色ゲル状)
Al(OH)₃は酸とも強塩基とも反応する両性水酸化物です。
Al(OH)₃ + 3HCl → AlCl₃ + 3H₂O (酸との反応)
Al(OH)₃ + NaOH → Na[Al(OH)₄] (塩基との反応)
Al³⁺水溶液にNaOH水溶液を加えるとき、少量ではAl(OH)₃の白色沈殿が生じますが、過剰に加えると沈殿が溶けて[Al(OH)₄]⁻の無色水溶液になります。NH₃水は過剰に加えてもAl(OH)₃は溶けません(NH₃は弱塩基で反応が不十分)。
Alはイオン化傾向が非常に大きく、Al³⁺を水溶液中で電気分解しようとしても、AlよりもH₂Oのほうが還元されやすいため、電極にAlが析出せず代わりにH₂が発生してしまいます。
アルミニウム単体は酸化アルミニウムAl₂O₃を溶融させて電気分解する(溶融塩電解)ことで製造します。これをホール・エルー法といいます。
Al₂O₃の融点は2054℃と非常に高いため、氷晶石(Na₃AlF₆)を溶媒として加えて融点を約1000℃に下げ、溶融した液を電気分解します。
陰極:Al³⁺ + 3e⁻ → Al(還元)
陽極:2O²⁻ → O₂ + 4e⁻(酸化)※陽極は炭素電極で、生成したO₂と反応してCO₂となる
アルミニウムの原料はボーキサイト(主成分Al₂O₃·nH₂O)です。ボーキサイトを精製してアルミナ(純粋なAl₂O₃)とし、溶融塩電解にかけます。
アルミニウムの粉末と酸化鉄(Ⅲ)Fe₂O₃の混合物(テルミット)に点火すると激しく反応し、多量の熱と溶融した鉄が得られます。
2Al + Fe₂O₃ → 2Fe + Al₂O₃
Alは還元剤としてはたらき、Fe₂O₃中のFeを還元します。この反応はレールの溶接などに利用されます。
アルミニウムの知識は、理論化学・無機化学・工業化学にまたがって多くの分野とつながります。
Q1. アルミニウムが塩酸と反応するときと、水酸化ナトリウム水溶液と反応するときの化学反応式をそれぞれ示せ。
Q2. Al(OH)₃の白色沈殿にNaOH水溶液を過剰に加えたときの変化を、反応式と観察現象で述べよ。
Q3. アルミニウムの製錬に溶融塩電解が必要な理由を述べよ。
Q4. アルマイトとは何か。また、なぜアルミニウム製品に使われるのかを説明せよ。
基礎(A)から発展(C)まで段階的に取り組んでみてください。
アルミニウムに関する記述として正しいものを、次の①〜⑤からすべて選べ。
②③⑤
①が誤り。Alはイオン化傾向が大きく水溶液の電気分解では得られません。酸化アルミニウムの溶融塩電解(ホール・エルー法)が正しい。
④が誤り。Al₂O₃は酸とも強塩基とも反応する両性酸化物です。酸性酸化物ではありません。
ホール・エルー法でアルミニウムを製造する。酸化アルミニウムAl₂O₃を溶融して電気分解したとき、以下の問いに答えよ。原子量:Al=27、O=16、F(ファラデー定数)=9.65×10⁴ C/mol。
(1) 陰極での反応をイオン反応式で示せ。
(2) 2.0 Aの電流を4時間通じたとき、陰極に析出するAlの質量(g)を求めよ。
(3) ホール・エルー法で氷晶石(Na₃AlF₆)を混合する理由を述べよ。
(1) Al³⁺ + 3e⁻ → Al
(2) 0.90 g
(3) Al₂O₃の融点(約2054℃)は非常に高く、そのままでは融解させるのにエネルギーが大きすぎる。氷晶石を溶媒として加えることで融点を約1000℃程度に下げ、効率よく溶融塩電解を行えるようにするため。
(2) 電気量 Q = 2.0 A × 4 × 3600 s = 28800 C。Al³⁺なのでAl 1 molの析出に3F(3×9.65×10⁴ C)必要。析出するAlのmol = 28800 ÷ (3×9.65×10⁴) ≒ 0.0994/3 ≒ 0.0333 mol。Alの質量 = 0.0333 mol × 27 g/mol ≒ 0.90 g。
AlCl₃水溶液にNaOH水溶液を少量ずつ加えていく実験を行った。以下の問いに答えよ。
(1) NaOHを少量加えたときに生じる沈殿の化学式と色を答えよ。また、その反応をイオン反応式で示せ。
(2) NaOHをさらに過剰に加えると沈殿はどうなるか。その反応をイオン反応式で示せ。
(3) 同じAlCl₃水溶液に対して、NaOH水溶液の代わりにNH₃水を過剰に加えた場合、沈殿はどうなるか。その理由も述べよ。
(1) Al(OH)₃、白色。 Al³⁺ + 3OH⁻ → Al(OH)₃↓
(2) 沈殿が溶けて無色透明になる。 Al(OH)₃ + OH⁻ → [Al(OH)₄]⁻
(3) 沈殿Al(OH)₃はそのまま残り、溶けない。NH₃は弱塩基であり、OH⁻の濃度がNaOHほど高くならないため、Al(OH)₃の両性反応(過剰OH⁻との反応)が進まないから。
(3) は論述頻出テーマ。「NaOHは強塩基(完全電離)でOH⁻濃度が高い→Al(OH)₃が溶ける」「NH₃は弱塩基(部分電離)でOH⁻濃度が低い→Al(OH)₃は溶けない」という対比を明確に書くと得点できます。