有機化合物は炭素を骨格とした化合物で、現在1億種以上が知られています。
構成元素の種類は少ないのに、なぜこれほど多様な化合物が存在するのか。
炭素原子の結合の仕方と官能基という2つの軸で分類すれば、全体像が一気に見えてきます。
有機化合物とは、炭素原子を骨格として含む化合物のことです。かつては「生物だけがつくれる」と考えられていましたが、1828年にウェーラーが無機物から尿素 CO(NH2)2 を合成し、この考えは否定されました。
| 特徴 | 内容・理由 | 無機物質との比較 |
|---|---|---|
| 構成元素が少ない | C, H, O, N, S, P, ハロゲンがほとんど | 無機物質は周期表の全元素を含み得る |
| 種類が膨大 | 炭素の4価結合が連鎖・分岐・環状構造を生む | 無機物質は数十万種程度 |
| 融点が低い | 分子結晶が多く、分子間力が弱い | 無機物質はイオン・共有結合結晶が多く融点高め |
| 水に溶けにくいものが多い | 無極性または極性が低い分子が多い | 無機塩は水に溶けやすいものが多い |
| 燃えやすい | C や H を含むため、酸化されやすい(CO2・H2O を生成) | 無機物質は一般に不燃性 |
官能基とは、有機化合物の性質を決める特定の原子団のことです。同じ官能基をもつ化合物は、炭素骨格が違っても似た化学的性質を示します。
| 官能基名 | 構造 | 化合物の種類 | 代表的な化合物 |
|---|---|---|---|
| ヒドロキシ基 | −OH | アルコール、フェノール類 | エタノール C2H5OH |
| アルデヒド基(ホルミル基) | −CHO | アルデヒド | アセトアルデヒド CH3CHO |
| カルボニル基 | −CO− | ケトン | アセトン CH3COCH3 |
| カルボキシ基 | −COOH | カルボン酸 | 酢酸 CH3COOH |
| エステル結合 | −COO− | エステル | 酢酸エチル CH3COOC2H5 |
| エーテル結合 | −O− | エーテル | ジエチルエーテル C2H5OC2H5 |
| アミノ基 | −NH2 | アミン、アミノ酸 | アニリン C6H5NH2 |
| ニトロ基 | −NO2 | ニトロ化合物 | ニトロベンゼン C6H5NO2 |
| スルホ基 | −SO3H | スルホン酸 | ベンゼンスルホン酸 C6H5SO3H |
有機化合物の一般式では、炭化水素基を R− と略記します。例えばアルコールは R−OH と表します。R は任意の炭化水素基(メチル基 CH3−, エチル基 C2H5− など)を表します。
炭化水素とは、炭素 C と水素 H だけからなる有機化合物です。有機化合物の骨格となる最も基本的な化合物群です。
| 分類 | 特徴 | 一般式 | 例 |
|---|---|---|---|
| アルカン | 単結合のみ(飽和)、安定、置換反応しやすい | CnH2n+2 | CH4, C2H6, C3H8 |
| アルケン | C=C 二重結合あり(不飽和)、付加反応しやすい | CnH2n | C2H4, C3H6 |
| アルキン | C≡C 三重結合あり(不飽和)、付加反応しやすい | CnH2n−2 | C2H2, C3H4 |
| 芳香族 | ベンゼン環あり、安定、置換反応しやすい | — | C6H6, C7H8 |
有機化合物の化学式には、情報量の異なる4種類の表し方があります。
| 表し方 | 記す内容 | エタノールの例 |
|---|---|---|
| 分子式 | 構成原子の種類と数 | C2H6O |
| 示性式 | 官能基を明示した化学式 | C2H5OH(または CH3CH2OH) |
| 構造式 | すべての共有結合を線で示す | H−C(H2)−C(H2)−OH(結合線で全表示) |
| 簡略構造式 | CH3− や C2H5− などをまとめて表示 | CH3CH2OH |
分子式 C2H6O だけでは、エタノール(CH3CH2OH)なのかジメチルエーテル(CH3OCH3)なのかわかりません。これらは互いに異性体です(詳細は 18-2)。
示性式や構造式を使うと、どの化合物かを一意に特定できます。
エタノールの分子式 C2H6O と示性式 C2H5OH は同じ化合物を表しますが、書き方が異なります。入試では「示性式を書け」という問いに分子式を書くと減点されます。示性式には必ず官能基(−OH, −COOH など)が明示されている必要があります。
有機化学全体は「炭化水素の骨格」+「官能基」の2軸で整理できます。
Q1. 有機化合物が無機物質に比べて種類が多い理由を、炭素原子の性質に注目して説明せよ。
Q2. 分子式 C2H6O で表される化合物を2つ示し、示性式で書け。
Q3. 次の官能基をもつ化合物の種類(分類名)を答えよ:① −OH(炭化水素の鎖につく場合) ② −COOH ③ −CHO
次の化合物(ア)〜(オ)をもつ官能基の名称と、その化合物の種類(アルコール・アルデヒド・ケトン・カルボン酸・エステルのいずれか)を答えよ。
(ア)ヒドロキシ基 −OH → アルコール
(イ)アルデヒド基 −CHO → アルデヒド
(ウ)カルボニル基 −CO− → ケトン
(エ)カルボキシ基 −COOH → カルボン酸
(オ)エステル結合 −COO− → エステル
次の炭化水素(ア)〜(エ)について、分子式を書き、アルカン・アルケン・アルキン・芳香族炭化水素のいずれかに分類せよ。
(ア)C3H8、アルカン(CnH2n+2、n=3)
(イ)C2H4、アルケン(CnH2n、n=2)
(ウ)C2H2、アルキン(CnH2n−2、n=2)
(エ)C6H6、芳香族炭化水素
一般式から分子式を求める。アルカン CnH2n+2、アルケン CnH2n、アルキン CnH2n−2 はそれぞれ H の数が2ずつ異なる。
有機化合物の一般的な特徴について、次の記述(ア)〜(エ)のうち誤りを含むものをすべて選び、正しく訂正せよ。
誤りは(ア)と(ウ)
(ア)正しくは:C, H, O, N のほかに S, P, ハロゲン(Cl, Br など)も構成元素となりうる。
(ウ)正しくは:エタノール・酢酸・グルコースなど水に溶けやすい有機化合物も存在する。「水に溶けにくいものが多い」が正確な表現。